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受験合格 簿記の基本 簿 3

受験合格 - iec.jpiec.jp/iec_hp/text_pdf/boki3kyu.pdf · でも日商簿記検定3級に合格できることを目指し、下記の工夫を施しました。 構成は、本文、ポイント、仕訳の確認、演習問題となっています。

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受験合格3級簿記の基本

日 商 簿 記 検 定

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 そもそも、会計とはなんでしょうか?

 会計は、この社会の中でいろいろな個人や企業や組織などが行う、売買や消費といっ

た経済活動を数値に変えて記録、計算、管理し、その情報を必要としている人に報告する

ことです。この講座では、企業についての会計、すなわち企業会計を学ぶための第一歩と

しての簿記を学んでいきます。 

 現代社会の経済活動は、企業の存在をなくしては成り立ちません。その企業が一体ど

んな経営状況なのか、どのようにして利益を上げているのか、それをその企業の利害関係

者に明らかにするのが会計です。つまり、会計は企業が発信しているメッセージとも言え

ます。そのメッセージを作り上げる基礎となるのが簿記という技術です。簿記のメカニズ

ムを知らずして会計を知ることはできません。ぜひ、簿記の知識を身に付けて、会社のリ

アルな財政状態や経営成績を知ることに役立てていただきたいと思っています。

 本講座は忙しいビジネスパーソンの皆さんに、簿記を楽しく、かつ、短時間で学んでい

ただくために、効率的な学習ができるようにしています。そして、初めて簿記を学習する方

でも日商簿記検定3級に合格できることを目指し、下記の工夫を施しました。

●構成は、本文、ポイント、仕訳の確認、演習問題となっています。

●本文は、検定問題に則し簡潔に記載してあります。

●図表を多く採用し、視覚的にイメージし易くなっています。

●演習問題の<解答へのステップ>は解法を丁寧に説明しており、応用問題にも対応で

きる力が身に付きます。

●一度テキストでインプット学習を終えれば、二度目からは別冊のポケット学習帳で短時

間で再確認ができます。

●検定試験用だけでなく、ビジネスに役立つ会計の入門書としてもご活用いただけるよ

うに、導入部で会計の本質に触れています。

 また、本講座は、ただ仕訳を覚えるだけでなく、複式簿記に関して、貸借対照表と損益

計算書の関係を論理的に理解していただけるよう説明をしています。それによって、会計

に関する応用力がつくことを目指しています。

 本講座の学習によって、皆さんが検定試験に合格し、仕事の上でも、簿記の知識を役に

立てていただけるようお祈りしております。

 なお、本テキストは、第1巻と第2巻に分かれています。この第1巻では、会計の基本で

ある複式簿記の原理と3級で知っておかなければならない勘定科目と取引の仕訳につい

て解説しています。

 まずは複式簿記の原理をしっかり理解してください。ここが理解できれば、仕訳につい

て迷うことがなくなります。次に重要な勘定科目や取引についての基本を解説していま

す。個々の論点をしっかり理解すれば総合問題にも対応できるようになります。

は じ め に

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第1章 会計の技術としての簿記:まずは複式簿記の原理から

そもそも会計とは?:簿記の考え方

2つの決算書:貸借対照表と損益計算書

簿記一巡の手続き:全体像を理解する

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

第2章 現金・預金:資産の基本を知る

簿記上の現金:紙幣や硬貨だけではない

当座預金:小切手の意味と使い方

当座借越契約:預金額を超える支払いへの対応

小口現金:日常の小さな支払いへの対応

現金過不足:現金が帳簿と合わない場合

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 5

第3章 商品売買取引:取引の基本を押さえる

分記法と三分法:商品売買の2種類の記帳方法

売掛金と買掛金:掛取引の考え方

仕入諸掛と売上諸掛:売買の諸費用の処理方法

値引き、返品:仕入・売上を取り消す仕訳

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 5

第4章 手形:資金決済の重要な手段

手形:小切手との違いと不渡りについて

約束手形と為替手形:2種類の手形と帳簿上の処理

自己受為替手形と自己宛為替手形:為替手形の特別な使い方

手形の裏書:手形を譲渡する方法

手形の割引:期日前の換金方法

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 5

Lesson 6

第5章 その他の債権・債務:その他の勘定科目を理解する

未収金、未払金:商品売買以外の取引による債権・債務

前払金、前受金:内金や手付金の帳簿上の処理

立替金、預り金:一時的な処理のための勘定科目

仮払金、仮受金:未確定な支出や収入を処理する勘定科目

貸付金、借入金:金銭の貸し借りを処理する勘定科目

商品券:商品券の発行と受取の処理

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

第6章 その他の資産・負債と純資産:商売の元手や長く使っていく資産

固定資産:長期にわたって使用する資産

有価証券:企業が所有する株式や国債

資本金、引出金:株式会社と個人企業の違い

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CONTENTS

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第1章 会計の技術としての簿記:まずは複式簿記の原理から

そもそも会計とは?:簿記の考え方

2つの決算書:貸借対照表と損益計算書

簿記一巡の手続き:全体像を理解する

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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10

12

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

第2章 現金・預金:資産の基本を知る

簿記上の現金:紙幣や硬貨だけではない

当座預金:小切手の意味と使い方

当座借越契約:預金額を超える支払いへの対応

小口現金:日常の小さな支払いへの対応

現金過不足:現金が帳簿と合わない場合

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 5

第3章 商品売買取引:取引の基本を押さえる

分記法と三分法:商品売買の2種類の記帳方法

売掛金と買掛金:掛取引の考え方

仕入諸掛と売上諸掛:売買の諸費用の処理方法

値引き、返品:仕入・売上を取り消す仕訳

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 5

第4章 手形:資金決済の重要な手段

手形:小切手との違いと不渡りについて

約束手形と為替手形:2種類の手形と帳簿上の処理

自己受為替手形と自己宛為替手形:為替手形の特別な使い方

手形の裏書:手形を譲渡する方法

手形の割引:期日前の換金方法

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

Lesson 4

Lesson 5

Lesson 6

第5章 その他の債権・債務:その他の勘定科目を理解する

未収金、未払金:商品売買以外の取引による債権・債務

前払金、前受金:内金や手付金の帳簿上の処理

立替金、預り金:一時的な処理のための勘定科目

仮払金、仮受金:未確定な支出や収入を処理する勘定科目

貸付金、借入金:金銭の貸し借りを処理する勘定科目

商品券:商品券の発行と受取の処理

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84

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Lesson 1

Lesson 2

Lesson 3

第6章 その他の資産・負債と純資産:商売の元手や長く使っていく資産

固定資産:長期にわたって使用する資産

有価証券:企業が所有する株式や国債

資本金、引出金:株式会社と個人企業の違い

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108

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Vol.1 簿記の基本

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 簿記検定は単に税率は何パーセントですか?などと知識だけを問われる試験ではありま

せん。学習した知識を、解法テクニックを使って解答を作成する技術が問われる試験です。

従って、単に知識を詰め込むだけでは合格することはできません。インプット学習とアウト

プット学習をバランスよく学習することが重要です。インプット学習は知識を得る学習です

が、アウトプット学習は解答を作成する練習であり、反復練習が高得点につながります。

 本テキストはセクションごとにインプットすべき知識を説明し、その後、それがどのような

形で出題され、どのように解答を作成すればよいかを説明しています。

 まずはテキストで必要な知識を身に付け、次にセクションごとの例題でどのような形式で

出題されるのかをつかみましょう。その後、「課題問題」「模擬試験」で自身の弱点を把握

します。どこに弱点があるかを把握できたら、再度テキストで弱点を克服します。このときポ

ケット学習帳を効率的に使ってください。その後、過去問題集などを繰り返し解いてくださ

い。

 出題パターンは、ほぼ決まっていますので、いろいろと手を出すのではなく、ある程度の範

囲を繰り返し確実に解答できるようにすることが重要です。

 まとめると以下のようになります。

 このように検定合格のためには、インプット学習とアウトプット学習のバランスが重要で

す。1つの目安としてアウトプット学習の時間は、インプット学習時間の同等以上の時間が必

インプット学習①テキストによる知識の習得

②演習問題による知識習得状況の確認

③自身の弱点を把握し、再度テキストにより知識を定着(ポケット学習帳も活用しま

しょう)

アウトプット学習④「模擬試験」「過去問題」(模擬試験問題集と添削課題)を解く

⑤わからない問題があれば適宜①に戻り、解答レベルを上げていく

⑥④~⑤をできる限り多く繰り返す

合格に向けての学習の仕方

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要であると考えてください。つまり、受験しようとする検定日までにご自身が確保できる学

習時間の半分までに、インプット学習が少なくとも1回は終わるように学習計画を立てるよ

うにしてください。アウトプット学習に入ってもインプット学習に戻ることになるためです。

 また、学習に際しては、以下の点に留意してください。

●インプット学習の②以降に関しては通勤途上の電車の中などでは困難ですので、机に向

かって学習できる時間を確保できるよう整えてください。

●仕訳問題対策などの知識の定着にはポケット学習帳を活用してください(通勤途上など

で可能です)。

●出題パターンは、ほぼ決まっています。④で出題傾向を把握してください。

●④で「ただちに~」「引き受けて~」など簿記検定特有の言い回しを理解してください。

●⑤のようにわからない問題は、その場で①に戻り確実に押さえてください。絶対に後回し

にしないでください。

●⑥で2回目以降は解答する際に時間を計り、制限時間内に解答できるか確認してくださ

い。

●問題によっては検定時間が厳しい場合もあります。⑥で2回目以降は、できる限り早く正

確に解答できるように練習しましょう。電卓の有効な使い方なども把握してください。

●試験直前はポケット学習帳を活用し、総確認をしてください。

 簿記検定合格に近道はありません。逆に言えば、上記のような学習を成し遂げれば必ず

合格できます。本講座を修了し、確実に自分のものにして、是非、合格を手にしましょう。

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学習スケジュールを立てる本講座は、3か月で、テキスト2巻と模擬試験問題集、ポケット学習帳、添削課題を学

習します。テキストの学習を始める前に、講座全体の学習スケジュールと各章の学習予

定日を決めましょう。1か月に1単元(テキスト1冊と添削課題1回)の学習が目安です。

各章の扉ページには「学習項目 Lesson」ごとの学習予定日と終了日を記入する欄が

ありますので、ここに記入しましょう。

各単元の学習を行う事前に立てたスケジュールに沿って、無理のないペースで学習をすすめていきます。

1か月目 Vol.1のテキストは全6章で構成されています。1週間で2章ずつ学習し、最終週で添削課題に取り組んで提出しましょう。

2か月目 Vol.2のテキストは全3章で構成されています。1週間で1章ずつ学習し、最終週で添削課題に取り組んで提出しましょう。

3か月目模擬試験問題集は全4回になっています。すべて解答し、自身で答え合わせをしてください。最終週で模擬試験式の添削課題に取り組んで提出しましょう。

テキストには、それぞれの章に「学習項目Lesson」があります。各Lessonの内容は以

下の通りです。

●学習項目Lesson…各Lessonは「本文」と「Point」「仕訳の確認」「演習問題」で

構成されています。理解を深めるために、わかりやすい図表も掲示されています。本

文とポイント、仕訳の確認を読んで、要点をしっかり理解したうえで演習に取り組みま

しょう。

本講座学習の流れ

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第1章

 この章では、簿記の勉強を始めるにあたって、会計の意味、重要性、全体像を理解していただきます。 まず、そもそも会計とは何か、簿記とは何かについて学習します。次に、複式簿記の原理を、会社の財政状態をあらわしている貸借対照表から学びます。 さらに簿記の一巡の手続きを説明します。ここで、会計のプロセス全体をつかんでください。

会計の技術としての簿記

まずは複式簿記の原理から

Lesson名 学習予定日 学習終了日

Lesson1 そもそも会計とは?:簿記の考え方

/ /

Lesson2 2つの決算書:貸借対照表と損益計算書

/ /

Lesson3 簿記一巡の手続き:全体像を理解する

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Lesson

1 そもそも会計とは?:簿記の考え方

間接金融と直接金融会社

株式市場借り入れ資金調達

間接金融直接金融

銀行

会計とは? 企業とは?

 会計とは何でしょうか? まずは、ここからスタートしましょう。会計とはこの社会の中でいろいろな個人や企業や組織などが行う、売買や消費といった経済活動を数値に変えて記録、計算、管理し、その情報を必要としている人に報告することです。

 そもそも、企業(会社)はどのように作られ、発展してきたのでしょうか? 現在の社会で経済活動している企業は、自然人である人と人が作った法人です。法人の中でも会社の存在なくしては現代社会は成り立たないでしょう。(注:企業と会社は同義ですが、個人商店も企業に入ります。その意味で企業のほうが広い概念といえます) 会社は人間がひとりではできないことを人や物を集めて可能にする存在です。しかし、会社はひとりでにできてきたのではありません。誰かが設立し、それを登記し、さらに資金がなくては何の活動もできないのです。では、資金を提供するのはいったい誰でしょうか? まずは金融機関が考えられます。金融機関は企業に対して資金を貸し付けます。金融機関の資金はもともとは預金者のものですから、金融機関からの貸付を間接金融といいます。しかし、金融機関から借りた資金はいずれは返済しなければなりません。将来にわたって資金を使用したい場合はどうしたらいいのでしょうか? それが出資、すなわち株主になってもらい、資本を提供してもらうということです。資本は期限が来たら返済するという性質のものではありません。出資者は、まさに会社に対するリスクを取って、資金を提供してくれている存在です。したがってこの出資を直接金融といいます。そして、その資金をより広く一般に求めることが上場するということなのです。

図1-1

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第1章 会計の技術としての簿記:まずは複式簿記の原理から

MEMO

会計とは……… 経済主体についての財務情報を識別し、測定し、それを求めている人に、数値に置き換えて伝えること

簿記とは……… 決算書を作るときに欠かせない技術

簿 記取引先

取引先 顧 客

従業員 銀 行

税務当局

会 計経済活動 決算書

仕入れ 販売

資金投下

支払

資本調達 123456

企業会計の意義と簿記

 企業会計の目的はまさにその企業(会社)がどのように資金を調達し、その資金を使ってどのような財産を持ち、その財産を使ってどれだけ利益を上げているのかをあらわすものです。 会社にお金を貸していたり、出資していたり、取引している人や団体の立場を考えてみましょう。その会社の実態を知らずして、資金を貸したり出資したりできるでしょうか? つまり、会計は企業の利害関係者にその姿を数値を使って明らかにすることによって、安心して付き合える状況を作るのです。 具体的には、会社の姿は決算書という書類によって知ることができます。この決算書を作るためには、会社が行う日々の営業活動を一定のルールに従って記録・集計しなければなりません。この技術が簿記であり、決算書を作るときに欠かせないものだということをしっかり理解しておきましょう。

図1-2

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貸借対照表を押さえる

 会社は決算書を通じて自分の姿(財政状態)を明らかにします。決算書とは、外部の利害関係者に対して収支や財政状態の報告をするための計算書類のことです。その種類には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算書などがあります。ここでは、主たる貸

たいしゃくたいしょうひょう

借対照表と損そんえきけいさんしょ

益計算書の2種類を学習します。まず、貸借対照表がどういうメカニズムで動くのかを説明していきましょう。 貸借対照表とは、会社の財政状態を表現する決算書です。図1-3のように資産、負債、純資産という3つの構成要素で示しています。資産とは、会社が所有する価値のあるもののことで、負債は法的な返済債務を負う、実在するものです。 どのような資産をいくら持っているのかを左側に示し、どのような負債をいくら持っているのかを右側に示します。そして、資産と負債の差額を純資産といいます。これで財政状態をあらわしています。 たとえば資産が¥200,000あるけれど、借金が¥100,000あれば純資産は¥100,000だと思いますよね? まさにその状態を示しているのが貸借対照表です。 では、具体的に会社の設立から考えてみましょう。最初に説明したように、会社は自然にできるわけではありません。必ず誰かが資金を提供しています。 たとえば、ある人が会社を設立し、その会社名義の銀行預金口座に¥3,000,000のお金が出資として振り込まれるとしましょう。このとき、会社にある資産は振り込まれた現預金だけです。この時点で負債はありません。したがって右側は資産と負債の差額の純資産だけとなります。(図1-4)

 次に銀行からお金を¥2,000,000借りたとします。このお金が会社名義の銀行預金口座に振り込まれるとしましょう。会社にとっては現金¥2,000,000とい

Lesson

2 2つの決算書:貸借対照表と損益計算書

貸借対照表

資産現預金

純資産

負債

図1-3

貸借対照表

資産

現預金3,000,000

純資産3,000,000

図1-4

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第1章 会計の技術としての簿記:まずは複式簿記の原理から

う資産が増えて¥5,000,000になるとともに、会社がいずれは返さなくてはいけない借入金¥2,000,000が増えます。これが負債です。純資産に変化はありません。純資産はあくまで、資産から負債を引いた差額のことなのです。 続いて現金¥1,000,000で商品を仕入れたとします。資産の中身の一部が現預金から商品に代わります。その他は変更ありません。つまり、商品を仕入れることは、儲けるとか利益を上げることとはまったく関係ありません。商品はお金が姿を変えたものなのです。(図1-5)

 ここで、商品が¥1,500,000ですべて売れて現金が入ってきたとします。現金は¥4,000,000プラス¥1,500,000の¥5,500,000になります。負債はもちろん変化はありません。ここで資産-負債差額が¥3,500,000となり、出資された金額¥3,000,000よりも大きくなりました。これが利益が出ているということです。 つまり、利益が出るということは 資産と負債の差額が出資された金額より大きくなるということなのです。これらの利益を利益剰

じょうよきん

余金という名前であらわし、貸借対照表の右と左を一致させます。(図1-6)

 逆に商品が仕入れた価格より低い金額の¥800,000でしか売れなかったとしましょう。現金は¥4,000,000プラス¥800,000の¥4,800,000になりますよね。負債はもちろん変化はありません。ここで資産-負債差額が¥2,800,000となり、出資された金額¥3,000,000よりも小さくなりました。これが損失が出ているということです。

貸借対照表

資産現預金

4,000,000

商品1,000,000資産

純資産3,000,000

貸借対照表

資産

現預金5,000,000 純資産

3,000,000

負債2,000,000

負債2,000,000

図1-5

図1-6

貸借対照表

資産現預金

4,000,000

現預金=商品分1,000,000

現預金=儲け500,000

純資産3,000,000

純資産=利益剰余金500,000

貸借対照表

資産

現預金4,000,000

資産商品

1,000,000

純資産3,000,000

負債2,000,000

負債2,000,000

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 つまり、損失が出るということは 資産と負債の差額が出資された金額より小さくなるということなのです。これらの損失は利益剰余金のマイナスとしてあらわし、貸借対照表の右と左を一致させます。(図1-7)

 以上を踏まえて、あらためて貸借対照表を示すと次のようになります。 純資産が、払

はらいこみしほん

込資本と利益剰余金の2つから成ることがわかります。 このように貸借対照表は、会社が・どのような資産をいくら持っているのか・どのような負債をいくら持っているのか・その差額としての純資産は、出資と自らの活動で利益として獲得した金額がそれぞれいくらか、をあらわしているのです。 なお、会計上のルールとして、資産を表示している左側を借

かりかた

方、負債と純資産を表示している右側を貸

かしかた

方といいますが(図1-8)、借方・貸方に特別の意味はありません。割り切って覚えてください。ちなみに、簿記を発明した中世イタリアで金融業者が左側にお金を借りた人、右側に貸した人を記入していたようで、左右の位置は、これに由来するともいわれています。

損益計算書を押さえる

 決算書は会社の利害関係者のためのものであると説明しましたが、利害関係者にとっては、財政状態だけでなく、その利益をどうやって獲得してきたのかという情報も必要ではないでしょうか? たとえば、本業が調子がよくて利益が出ているのか、本業は今一つだったので資産を売

貸借対照表

資産現預金

4,000,000

現預金800,000

資本2,800,000

資本=損失△200,000

貸借対照表

資産

現預金

資産商品

資本

負債2,000,000

負債

図1-7

貸借対照表(借方) (貸方)

資産純資産

払込資本利益剰余金

負債

図1-8

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第1章 会計の技術としての簿記:まずは複式簿記の原理から

却して利益を得たのか、という情報が知りたいのではないでしょうか? それを教えてくれるのが損益計算書です。つまり、損益計算書は利益剰余金のある一定期間の動きの明細をあらわしてくれるものなのです。利益剰余金を増やす内容を“収益”と呼び、減らす内容を“費用”と呼びます。

 ところで、損益計算書は利益剰余金のある一定の期間の動きの明細をあらわすといいましたが「一定の期間」とは、いったいいつからいつまでのことを指すのでしょうか? 企業は通常、破産・閉店などの特別な事情がない限り、営業活動を継続して行っているため、簿記上では一定の期間を区切り、この期間ごとに損益の計算を行います。この期間を会計期間(または会計年度、事業年度)といい、ほとんどの企業では1年を1会計期間としています。そして、この会計期間の初めを期

きしゅ

首、終わりを期末(または年度末)といいます。 なお、日本では4月1日を期首とし、3月31日を期末とする企業が多いのですが、銀行・証券会社等の金融業や電気・ガスなどのエネルギー業界等、特別の法律に基づいて事業を行っている企業以外は事業年度は自由に決めることができます。たとえば、スーパーやデパート等の小売業界の企業は、昔からニッパチといって物があまり動かず、棚

たなおろし

卸のしやすい2月と8月に決算期を設定している会社が多いのです(棚卸については8章で詳しく説明します)。

図1-9

収 益たとえば、製造メーカーが得意先に製品(商品)を販売したり、運送会社が運送業務などのサービスをすることによって得られた収入(売上)のこと。また、企業本来の営業活動ではないが、普通預金の利息を受け取ったり、株を売却して得た収入なども含まれる。

費 用たとえば、原材料や資材の購入費、従業員の給料、賃借している家賃、事務用品やパソコンなどの消耗品費、パンフレット等の印刷費、ガソリン代、電話料金などの通信費、電気・ガスなどの光熱費など、営業活動のための支出のこと。また、企業本来の営業活動ではないが、借入金の利息を払ったり、株の売買での損失なども含まれる。

利益剰余金を増やした理由を示すもの

利益剰余金を減らした理由を示すもの

図1-10

株式会社◯◯◯◯

損益計算書20XX年1月1日より2月28日まで

単位(千円)

収益(売上) 1,500,000費用(売上原価) 1,000,000

利益 500,000

貸借対照表

資産

現預金資本=出資

負債

資本=儲け(利益剰余金)

損益計算書

費用1,000,000

利益 500,000

収益1,500,000