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1 スリランカ現地研修報告書 海外フィールドワーク演習Ⅱ/国際協力の実際と課題) 期間:2019 3 2 日~3 11 宇都宮大学国際学部国際学科 1 栢元果積、菊池蓮、塩原拓也、白毛夏美、須藤花音、鈴木悠太、本多恵、前島早希 宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科 1 藤倉理子 宇都宮大学農学部応用生命化学科 1 井上美智 宇都宮大学農学部農業環境工学科 1 中元晃、福田真由、吉野匠 (学年はいずれも本研修参加時のものとする)

スリランカ現地研修報告書 - Utsunomiya UniversitySri Lanka 図 1 スリランカの地図 Negombo Nuwaraeliya 6 3月7日(木) インジェストリ農園 お家訪問

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スリランカ現地研修報告書

(海外フィールドワーク演習Ⅱ/国際協力の実際と課題)

期間:2019 年 3月 2 日~3 月 11日

宇都宮大学国際学部国際学科 1年

栢元果積、菊池蓮、塩原拓也、白毛夏美、須藤花音、鈴木悠太、本多恵、前島早希

宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科 1年

藤倉理子

宇都宮大学農学部応用生命化学科 1年

井上美智

宇都宮大学農学部農業環境工学科 1年

中元晃、福田真由、吉野匠

(学年はいずれも本研修参加時のものとする)

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目次

1.はじめに ...................................................................................................... 3

2.訪問先の詳細 ............................................................................................... 3

3.旅程・日程(井上美智).......................................................................... 5~6

4.開発の現場 .................................................................................................. 7

① 国際移住機関(IOM)スリランカ事務所訪問(中元晃) ................................... 7

② 在スリランカ日本国大使館訪問(前島早希) ............................................... 7

③ 国際協力機構(JICA)スリランカ事務所訪問(藤倉理子) .............................. 8

④ 青年海外協力隊環境隊員活動訪問(福田真由) ............................................ 9

⑤ 青年海外協力隊野球隊員活動訪問(吉野匠) ............................................. 10

5.紅茶農園に関連した訪問先 ........................................................................ 11

① インジェストリ農園学校交流(本多恵) .................................................... 11

② インジェストリ農園家庭訪問(須藤花音) ................................................. 12

③ ダラワラ農園学校交流(栢元果積) ........................................................... 13

④ ダラワラ農園家庭訪問(白毛夏美) ........................................................... 13

⑤ 紅茶工場見学(鈴木悠太) ........................................................................ 14

6.ペラデニヤ大学ジョイントセッション ....................................................... 15

①Gender(塩原拓也、白毛夏美、須藤花音) ....................................................... 15

②Livelihood(井上美智、栢元果積、菊池蓮) ................................................... 16

③Youth Development(中元晃、本多恵) ............................................................ 17

④Education(鈴木悠太、藤倉理子、福田真由) .................................................. 18

⑤Employment(前島早希、吉野匠) .................................................................... 19

7.まとめ(菊池蓮、塩原拓也) ............................................................... 19~22

8.個人の感想と今後 ................................................................................ 22~30

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1.はじめに

本報告書は 2019 年 3月 2日から 3月 11日にかけてスリランカ民主社会主義共和国にお

いて行われた現地研修をまとめたものである。研修は国際学部国際学科専門科目である

「海外フィールドワーク演習Ⅱ」および基盤教育科目「国際協力の実際と課題」の講義の

一環として行われた。講義においては、実際に国際協力の現場を訪問し、その現実と課題

を学び、問題解決のための技術・知識・資質を身に着けることが目的とされている。

今回の現地研修においては、スリランカを拠点とする国際機関、ODA組織や青年海外協

力隊などスリランカにおける日本の政府組織、そして茶畑を取り巻く環境を理解するた

め、茶畑のプランテーションやそれらを支援する NGOの活動を見学した。本報告書におい

ては、各見学した機関についての概説や活動内容、そして研修参加者の感想と今後につい

て述べる。

2.訪問先の詳細

・国際移住機関(International Organization Migration)

IOMは移民や移住に関する国際機関であり、国際連合の一機関である。世界に 9ヵ所の

地域事務所と、147ヵ国 393 ヵ所にフィールド事務所を持ち、職員数は 11,000人を超え

る。スリランカの事務所においては数年前に終結した内戦によって世界に散っているスリ

ランカ人難民や、周辺の情勢によってスリランカへと逃げてくる難民や移民への支援など

を行なっている。訪問の際には、インドなど周辺諸国と連携した南アジア地域の移民・難

民へのサポートや、内戦によって生じた移民・難民の帰国支援などについてスライドや動

画を用いて説明していただいた。

・在スリランカ日本国大使館

スリランカには日本との国交正常化がなされた 1952 年から大使が置かれ、外交関係の

調整やスリランカ在住日本人へのサポートなどが行われている。日本とスリランカの関係

性は、1951 年サンフランシスコ講和会議の場で、当時のセイロン代表者が対日賠償請求権

の放棄を宣言し、日本の国際社会復帰への道筋を作ったことでも知られる。現在日本国大

使館となっている建物は 1891 年に当時の最高裁判事によって建設され、以降、軍の総司

令官邸宅やオーストリア領事館としても使用されていた歴史ある建物である。今回は大使

館内の一室において、日本とスリランカとの二国間関係や歴史、現在日本がスリランカに

関連して行なっている国際協力などの活動について解説していただいた。

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・国際協力機構(Japan International Cooperation Agency)

JICAは正式名称を「独立行政法人国際協力機構」といい、開発途上地域等の経済や社会

開発、復興や経済の安定に寄与することを通じた、国際協力の促進や日本及び国際社会の

健全な発展を目的とする日本国政府の ODA機関である。世界 107ヵ国で事業を展開し、そ

の分野は教育や農業、都市開発からジェンダー課題や平和構築と多岐にわたる。スリラン

カにおいては、経済成長持続を狙った運輸インフラ整備、経済格差の抑制と地方開発促進

のための農漁村開発を行っている。また、草の根協力支援型事業として宇都宮大学国際学

部を提案団体とした「紅茶プランテーション農園における青年層を活用した学童補習活性

化」を行っている。本事業においては、教育インフラの脆弱であるプランテーション内の

子供たちに対し、内部の青年層を活用して質の高い教育環境を提供することを目的とした

活動である。コロンボに所在する現地事務所においては上記のような活動についてのご説

明をいただいた。

・青年海外協力隊(Japan Overseas Cooperation Volunteers)

青年海外協力隊は ODAの一環として JICAが行なっているボランティア派遣制度であ

る。20〜39 歳が募集対象で、120 以上の職種で募集が行われている。2019年 3月 31日現

在で、73カ国に 1,666人が派遣されている。今回スリランカで訪問した活動は野球教育と

環境教育で、野球教育においては、野球のあまり浸透していないスリランカにおいて、そ

の技術指導などを行なっている。環境隊員の活動訪問においてはキャンディ内の幼稚園に

おいて、園児に対しゴミの分別を教える活動などを始めとし、環境意識を向上させるため

の活動が行われていた。また、活動の見学以外にも、隊員の方々のお話を聞く機会をいた

だき、野球、環境のほかにコミュニティ開発隊員の方とも交流することができた。

・ペラデニヤ大学

ペラデニヤ大学はスリランカ中央部のキャンディ郊外に位置する国立大学であり、宇都

宮大学の協定校である。9つの学部から成り、約1万 1,000人の学生が学んでいる。日本

からの ODAにより複数の建物が建造され、一部の教育プログラムも日本の ODAによって行

われている、日本との繋がりも深い大学である。今回の研修では、プログラムにおける中

心的な活動である、茶園における共同調査とジョイントセッションを行い、交流した学生

は、農学部農業普及学科の所属であった。

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3.旅程・日程(井上美智)

期間:2019 年 3月 2日(土)~ 2019年 3月 11日(月) 計 10日間

場所:スリランカ、ニゴンボ・ダンブッラ・コロンボ・キャンディ(図 1)

3月2日(土)

成田空港 コロンボ空港

3月3日(日)

ダンブッラ石窟寺院 サファリ スリランカ最大の石窟寺院 ジープにのって野生動物を見物

を観光。世界遺産でもある

3月4日(月) 3月5日(火)

シーギリヤ・ロック 国際移住機関(IOM) 日本大使館* JICAスリランカ事務所 世界遺産に登録されて 移民や IOMの活動 スリランカの概要や スリランカの概要や

いる。昔、王都として についての説明 日本大使館が行っている JICAの活動についての説明

使われた岩山を観光 活動についての説明

3月6日(水)

青年海外協力隊(環境) 仏歯寺 青年海外協力隊 (野球) 幼稚園を訪問、ゴミの分別について スリランカを代表する仏教寺院を観光。 キャッチボール、交流試合

指導している様子を見学 寺院内に奉納される仏歯は昔、仏陀を火葬

した際、得られたものといわれる

Colombo

Dambulla

Kandy

Sri Lanka

図 1 スリランカの地図

Negombo

Nuwaraeliya

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3月7日(木)

インジェストリ農園 お家訪問 子供たちの夢の発表、授業の様子を見学。 生徒の家(ラインルーム)を訪問

じゃんけんや抹茶の試飲会、歌による交流

3月8日(金)

ペラデニヤ大学の学生と交流 ダラワラ農園 お家訪問 お互いの自己紹介 イス取りゲーム、抹茶の試飲会による交流 生徒の家を訪問、

家族の方にインタビュー

3月9日(土)

ペラ大生とセッション&プレゼンテーション ペラ大生と交流 昨日のインタビューをもとにした議論、発表 歌、踊りによる交流

3月10日(日)

ギラガマティーファクトリー ダッチ・ホスピタル 紅茶の葉を加工する オランダ統治時代の病院を改装し、

様子を見学 ショッピングセンターとなった建物を観光

3月 11日(月)

コロンボ空港 成田空港

*日本大使館内に携帯・カメラ等を持ち込むことは禁止されているため、写真なし

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4.開発の現場

今回の研修においては、JICA のような日本の開発機関や IOM のような国際機関など、

海外における国際開発・国際協力の現場を訪問、見学した。日本においての「海外フィール

ドワーク演習Ⅰ」の講義内においても、JICA つくばを訪問させていただいたように、開発

の現場を見学する機会はあった。しかし、海外においてそういった日本においての活動、サ

ポートが実を結んでいる現場を見たのは今回が初めてであり、非常に多くの学びを得るこ

とができた。

国際移住機関(IOM)スリランカ事務所訪問(中元晃)

<訪問日時:3月 4日午後 場所:コロンボ>

3月 4日午後、我々は IOM(International Organization of Migration)in Sri Lanka

を訪問した。Institute of Bankers of Sri Lanka Buildingという近代的できれいな建物

の9階にその活動拠点を置いている。オフィス内の雰囲気は、各々が自分たちのタスクを

淡々とこなしており、予想と違って静かで落ち着いていた。

少し緊張している我々を温かく迎えてくださったのは、プログラムマネージャーの Ms.

Masako Ueda、移住者援助部長の Mr. Priyantha Kulathungaと三名のスタッフだ。彼らは

我々のために IOM in Sri Lankaがどのような組織なのか、そしてどの様な活動をしてい

るのかなどを大変わかりやすく講義してくださった。講義はすべて英語で行われたので、

所々難解な内容もあったが、明確で分かりやすいスライドと説明のおかげで理解すること

が出来た。また質疑応答の時間も設けていただき、英語で質問するという貴重な体験がで

きた。

IOMは日本語訳すると「国際移住機関」つまり、移住や移民に関する国際的な機構であ

る。また国際連合の機関に移民のサポートに関するものは他になく、この IOMが唯一のそ

の機能を果たす機関である。IOM in Sri Lankaは、2002 年にもともとスリランカにあっ

たボランティア活動団体が基となって設立された。様々な理由で移住してくる、または他

国に移住し再びスリランカに戻ってきた人々の支援を行っている。彼らは移住者の入国か

ら始まり、彼らのコミュニティづくりの支援や、安定した収入を得られるように仕事を始

めるため、資本金を提供するなどの手厚い支援だけでなく、移住者をトラウマから守るな

ど、人身売買などの危険要素を避けるための教育も行っている。また移住者がその支援に

依存しないように、支援の内容に自立を促す工夫を凝らしていることが印象に残った。

① 在スリランカ日本国大使館訪問(前島早希)

<訪問日時:3月 5日午前 場所:コロンボ>

私たちは 3 月 5 日午前、在スリランカ日本国大使館を訪問した。今回は、スリランカの

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外交や日本国大使館が行なっている支援についてお話を伺った。 スリランカ、日本、インド、中国の国々には、繋がりがある。中国が一帯一路構想を実現

させようとする中で、スリランカとの関係強化のために、ハンバントタの港の開発の費用と

して、中国はスリランカに多額の資金を貸し付けた。結局スリランカはその借金を返すこと

が出来ず、中国は港の運営権を 99 年支配することができるようになった。スリランカに対

して、中国も日本も支援を行なっているが、規模では中国、質では日本の支援が優れている。 インドのスリランカとの関係は、民族的な繋がりが深く、シンハラ人とタミル人という同

じ民族がインドにもいる。その繋がりが影響して、海軍演習をインドとスリランカは一緒に

行なっているという。 日本国大使館は、JICA などの活動とは別の「KU・SA・NO・NE」という活動を行なっ

ている。「KU・SA・NO・NE」の特徴は、JICA などの活動に比べて、1000 万円規模であ

り、1、2 年で 1 つのプロジェクトが完結するように小規模で早いことである。この支援は

スリランカ政府に直接支援するのではなく、スリランカで活動する NGO やスリランカの地

方自治体と協力して、支援を進めている。「KU・SA・NO・NE」の活動は様々な発展途上

国で行われているが、スリランカでは、地雷の除去や障がい者の支援などが進んでいる。日

本をはじめとした各国の支援が身を結び、スリランカは発展途上国から中進国という分類

に成長しているという。 在スリランカ日本国大使館を訪問して感じたものは、そもそも、私の考えていた大使館の

イメージとは異なるものだった。大使館というのは、旅行してきた日本人やスリランカに住

んでいる日本人のためにあるというイメージが強かった。しかし、スリランカの人々のため

に、「KU・SA・NO・NE」というような支援を行なっており、さらには、スリランカの人

と協力して、様々な方面の支援を行なっていることを知り、大使館はただ単に日本人のため

にある役所ではないと実感した。日本とスリランカの良好な関係を続けていくために、在ス

リランカ日本国大使館は、日本人はもちろん、スリランカの人のためにも動いていかなくて

はならない、責任のある役割を担っていると感じた。

② 国際協力機構(JICA)スリランカ事務所訪問(藤倉理子)

<訪問日時:3月 5日午前 場所:コロンボ>

3 月 5 日午後、私たちはコロンボにある JICA スリランカ事務所を訪問した。高層ビル群

の一角にある事務所の厳かな雰囲気は、JICA の担う役割の大きさや、私たち学生にとって

は非常に貴重な訪問であることを思い知らされた。

スリランカの基本情報と、JICA のスリランカにおける活動の 2 部構成でお話をしていた

だいた。前者では、民族構成、言語、宗教、大統領と首相、所得、外交、主要産業などを、

後者では、JOCV との連携や、農業の現地人の養成、インクルーシブ教育や経済成長支援な

どを教えていただいた。

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現在の主要産業は紅茶やゴムといったモノカルチャー産品で、その他の産業を伸ばす必

要があるとおっしゃっていた。そこで、スリランカで今後期待される産業は何かを質問した

ところ、今は具体的な目途はたっていないとのことだった。観光業が伸びてはおり、ビーチ

リゾート、アーユルベーダなどのイメージが付き、日本からも観光地として注目されている。

しかし、一度でも事件や災害があると負のイメージが付いてしまい、継続的で効果的な産業

になりえないことを指摘していた。その言葉通りこのたびスリランカにて同時多発テロが

起きてしまい、観光業の停滞が見込まれる。災害であれば、東日本大震災による急激な外国

人観光客の低下を脱却した日本のように、その国の魅力がある限り可能性はあるが、今回の

ようにテロの場合、危険な国と認識されてしまい、観光客を取り戻すのには時間がかかると

予想される。

また、海外からの投資が増えつつあるとお聞きし、投資を見込める要因は何かと質問した

ところ、地理的要因が功を奏し、港湾業、流通業者、IT などに期待しているとのことだっ

た。打撃を受けると思われる観光業の代わりに、立地や技術を生かした分野が安定的に伸び

ることが期待される。それに至るには、先進国として新しい分野での役割が出てくることも

考えられ、支援の仕方にも変化があるだろう。

JICA での話を聞き、最も重要だと感じたことは、支援先の主体性を損なわない支援をす

ることだ。農業の現地人プロフェッショナルを育成するというプロジェクトはまさに、一方

的な支援ではなく、将来を見据えた自立を促す支援であるといえる。農業分野のプロジェク

トがうまくいけば、土木分野、IT 分野など、必要とされる様々なことに応用できる。日本

のインフラはほぼ完了しているので、ノウハウの維持のために海外需要は日本にとっても

大切であると言われている。このように支援する方、される方お互いの国にとって国際協力

には意義がある。その際に決して支援する方が優位に立たないことを意識する必要がある。

主要産業の転換は途上国であればどこも直面する課題である。日本も島国であるため、港湾

業、海域資源の活用、隣国の大国との関わり方は通ずるものがあると思う。そこにおいても

主体性を尊重し、国のポテンシャルを最大限に生かした政策を行うべきだ。

③ 青年海外協力隊環境隊員活動訪問(福田真由)

<訪問日時:3月 6日 場所:キャンディ>

JOCV 活動訪問として、環境教育隊員である植村氏の幼稚園での活動を見学した。内容は

「ごみをごみ箱に捨てること。正しく分別すること」である。

日本では、ごみをごみ箱に捨てることは幼いころから各家庭で習慣化されているが、スリ

ランカでは異なる。親が適切な教育を受けていなければその子供もそれを受けることがで

きない。そこで幼稚園では、青年海外協力隊員による教育を行っている。その中の一つが植

村氏による環境教育である。

2つのイラストを用いて園児に考えさせるところから始める。1つはごみが落ちており汚

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れた通学路のイラスト、もう一方はごみのないきれいな通学路のイラストである。園児にど

ちらのほうがよいか、きれいにするためにはどうすればよいかを問いかけ、考えさせる。そ

の後、3つのバスケットを用意して分別の仕方について説明していた。園児の様子を見なが

ら、お遊戯を取り入れるなどして楽しく学べるような工夫がされていた。

園児に環境教育を行うことによって、普段の生活において子供が親に注意をすることが

でき、よい影響を与えることができる。また、これからのスリランカの発展に関わる子供た

ちがこれを知っていることは重要である。子供以外でも、私が訪れた場所にはごみの分別が

示されたごみ箱が設置されているところも多くあり、分別を進める意識が見られた。

ただし、子供への環境教育だけでは不十分である地域も見ら

れた。インジェストリを訪問した際、ごみ捨て場で分別されてい

ても、ごみ捨て場の中で火をつけることによって、すべて焼却処

分している場所があった(写真1)。ごみの分別の重要性を理解

していたとしても、その場所の立地によりごみ収集車が入って

くることができないといった理由で、適切な処理ができていな

いという現状がある。さらに、都市部でもごみの投棄があちこちで見られた。ただ分別をす

るのではなく、何故しなければならないのか、どのように処理すればよいのかを正しく理解

する必要がある。またそのためのインフラの整備も必要である。3Rなどといった、ごみを

少なくするライフスタイルの提案をすることも効果的である。

スリランカの環境教育隊員はごみ問題の解決、さらに健康な生活を送るための環境づく

りに向けた教育支援をしている。経済発展途上では、衛生問題やごみ問題がつきものである。

彼女らはこの問題の解決に向けて、より生活しやすい社会づくりに貢献していた。

④ 青年海外協力隊野球隊員活動訪問(吉野匠)

<訪問日時:3月 6日午後 場所:キャンディ>

3月6日の午後、私たちは広いグラウンドがある小学校に赴き、青年海外協力隊の野球

隊員が主催する子供向けの野球教室を見学した。子供たちは男女問わず 8歳〜16歳の子が

おり、つい先日始めたばかりの少女から、スリランカのナショナルチームでプレイする少

年まで幅広い層だった。この活動を通じて子供たちにルールを守る大切さを学んで欲しい

という。

スリランカではクリケットがとても盛んであり、野球はマイナーなスポーツだ。ちょう

ど日本のそれと正反対である。したがって、クリケットや人気のサッカーとの二刀流の子

供たちがほとんどであった。また、グローブやバットなどの用具は現地では手に入らない

ため、日本からの支援により補っていた。

教室の内容はキャッチボールなどの基礎練習や、試合を通じてルールを教えるものだっ

た。日本とは違い、現地の子供たちは列に並ぶなど、ものを貸し借りすることに抵抗があ

写真 1

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るようで、度々けんかを起こしていた。隊員の方達は現地語を駆使し、彼らにルールを教

えていた。

私たちは彼らに交じり、試合を行った。スポーツは国境を超えるとはよく言ったもの

で、あっという間に彼らと仲良くなり、そこかしこで笑顔があふれていた。ただ、最後の

お別れの時に今のスリランカ情勢を表す衝撃的な出来事があった。バスに乗り込んだ私た

ちに子供たちが窓の外から群がり、「Give me money!」「Give me chocolate!」と連呼し

てきたのだ。私たちが無いよというと、残念そうな顔で帰っていった。つい先ほどまで仲

良く交流していたということもあり、このような終わり方はショックであった。経済面的

に仕方がないことはわかってはいたが、なんとも言えない感情が胸を襲った。彼らから見

ると自分たちはどのように映っていたのか、仲良くしていた時にもお金のことを考えてい

たのかと、とても残念な気持ちになった。それほど無邪気な笑顔から瞬時に変わったあの

顔は忘れ得ぬものとなった。

5.紅茶農園に関連した訪問先

3月7日以降は主に紅茶プランテーション農園を訪問した。今回の研修において訪問した

農園はインジェストリ農園とダラワラ農園で、それぞれ現地 NGOセワランカと JICAが協力

して行っている学童補習活性化事業の見学や、プランテーション内のコミュニティ見学を

行った。学童補習活性化事業は、JICA がスリランカにおいて行っている草の根協力支援型

事業の一環であり、農園内の子供たちに質の良い教育を提供することを目的とし、農園内の

青年層が学童補習に関わることを支援している。以下は各農園の訪問、活動の様子である。

① インジェストリ農園学校交流(本多恵)

<訪問日時:3月 7日午後 場所:ヌワラエリヤ県内>

2019 年 3 月 7 日、インジェストリ農園内小学校を訪問。額に赤い粉を付ける、ヒンドゥ

ー教の伝統的な歓迎儀式で出迎えられた。 始めに、国際学部栗原俊輔先生と JICA、現地 NGO セワランカが共同で行っている

「スリランカのプランテーション農園で暮らす小学生への課外活動活性化支援プログラ

ム」の放課後学習を見学した。今回は屋内での英語の授業であった。元気に手を挙げ、大

きな声で発表を行う子どもたちの姿から、この放課後学習を楽しんでいる様子がうかがえ

た。 続いて、宇都宮大学の方から先方にお願いしていた「子どもたちの将来の夢」を描いた

絵の発表会に参加した。学校の先生や医者など、一人ひとりが自分だけの夢をもち発表を

していた。参加した会だけでも、農園の労働者になることが将来の夢だという子どもはい

なかったが、ほかの職業も4つ程しか上がらず、職業選択の狭さを感じ取った。 そして、宇都宮大学のほうから催し物を行った。まず、じゃんけんゲームを、じゃんけ

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んの仕組みや勝敗の付け方から教え、子どもたちと楽しんだ。初めて知るじゃんけんを、

子どもたちは戸惑いながらも遊び方を覚えようと真剣に説明を聞いてくれた。次に、抹茶

のお点前を披露した。子どもたちも学校の先生も、セワランカの方も興味津々なようであ

った。味のほうは、意外にも半数の生徒からおいしいという感想を聞くことができた。2

つの催し物を行い、改めて、日本とスリランカの文化の違い、文化を正確に伝えることの

難しさに気づくことができた。最後に歌を披露しあい、写真撮影を行った。

② インジェストリ農園家庭訪問(須藤花音)

<訪問日時:3月 7日 場所:ヌワラエリヤ県内>

3月7日インジェストリ農園の学校に通う生徒数名の家に、宇都宮大学の学生13名が

3、4名ずつに分かれ、計4グループで訪問した。 インジェストリ農園の生徒の家はラインハウス(長屋)である。これはスリランカが英国

に植民地支配を受けていた時に建設された。英国による紅茶プランテーションの運営がな

される際、南インドから労働力として連れてこられたタミル人の人々の住居として割与え

られたものである。 実際にラインハウスに向かうと、外観は緑や桃色といった、鮮やかな色彩の壁が目立った。

ある生徒の家族は、生徒とその両親の他に兄弟3名の7人家族で、子供たちのうち1名は乳

児であった。玄関から中に入るとすぐ居間があり、いくつか椅子が置かれていたが、座面に

亀裂や傷が目立ち、また椅子を並べた状態で大人が3、4名も入ると窮屈に感じるほどの大

きさであった。ほかにもテレビや棚などの家具もあったため、子供たちが成長期のまだ体の

小さなうちは問題ないが、子供たちが成長して体が大きくなった時にも家族が全員でくつ

ろぐには少し狭いと思われた。居間の奥には寝室があったが、ベッドは2台のみ、寝る際は

家族全員がそこで横になるため、窮屈な体勢で就寝するということであった。これでは乳児

の就寝中の安全確保や子供たちが今後成長し体が大きくなった際の寝るスペースの確保、

さらにはプライバシーの保護に適しているとは言えない。また部屋には開口部が極端に少

なく、日光が入りづらいため、ラインハウスの外観とは反対に全体的に薄暗い印象を受けた。

さらに開口部の少なさによって部屋の換気が難しくなり、衛生的にも好ましくない状況で

あった。トイレや水道、シャワーはラインハウスの部屋の中にはなく、トイレは玄関を出て

数歩歩いた先の簡易な小屋の中にあり、水道兼シャワーはその裏に外付けされ、キッチンは

別棟にあった。トイレやシャワーに関して、プライバシーの保護が不十分であることは明ら

かであり、また特にトイレに関しては、生理中の女性と共用のトイレを使った際の血液感染

や、その他の感染症対策の難しさも予想できる。 また、別の生徒の家も、部屋がより広く、部屋の個数も多い場合があったが、同様の生活

環境であった。それゆえに、農園内での生活に不便さなどを感じる機会がなく、部外者が生

活環境の向上のための支援を行ったとしても、当事者の需要と一致せず支援が成り立たな

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い可能性があるのではないかと考えた。 このように、実際に紅茶農園の労働者の居住地域を訪問することで初めて気づいた点も

多々あった。特に、日本と比較すると不便なこれらの生活環境を目の当たりにし、JICA の

「草の根技術協力事業」が掲げる 3 つの視点のうち、3 つ目の「日本の市民の国際協力への

理解・参加を促す機会となること」に関連して、この状況を是非とも日本の人々に伝えたい

と思えた。

③ ダラワラ農園学校交流(栢元果積)

<訪問日時:3月 8日午後 場所:ヌワラエリヤ県内>

ペラデニヤ大学の学生と共に、ダラワラの小学校を訪問した。学校では、子供たちと一緒

に椅子取りゲームをして交流を深めた。はじめは、外国人である私たちを怖がっている様子

が見られたが、一緒にゲームをしていくうちに、子供たちの笑顔をみることができた。ゲー

ムをしている子供たちはいきいきとしていて楽しそうだった。その後、私たちは、日本文化

である抹茶を点てて、子供たちに披露した。子供たちは抹茶を点てる様子を興味深そうにみ

ていた。抹茶を苦そうな顔をして飲んでいる子もいれば、おかわりを欲しがる子もいた。彼

らにとって、抹茶の味は新鮮だったようだ。その後、日本のお菓子を子供たちに振る舞った。

みんなとてもおいしそうに食べていた。

一方で、教室の中は薄暗く、校庭の広さも日本のものと比べるとずいぶん狭く、設備が行

き届いているとは言えない環境だった。将来のある子供たちにたくさんの選択肢を与えて

あげられる環境になるように、私たちは消費者として、紅茶農園の問題に関して何をしてい

くべきか考えて行かなければならないと感じた。

④ ダラワラ農園家庭訪問(白毛夏美)

<訪問日時:3月 8日午後 場所:ヌワラエリヤ県内>

小学校での交流の後、数人に分かれて紅茶プランテーション内で暮らす小学生の家庭を

訪問し、聞き取り調査を行った。以下では訪問に協力してくれたうちの一人、プラナム君の

家庭を中心に報告する。

プラナム君の家は、小学校に面した広い道から伸びる細い脇道を抜けてすぐのところに

ある。家は道を挟んで二棟あり、一つは紅茶プランテーション会社から貸与されたもの、も

う一つはプラナムの祖父が自分で手に入れたものだ。はじめに祖父が建てた家に案内され

た。玄関はなく靴を脱いで上がった。入るとすぐに 15帖ほどの居間があり、奥に 4帖ほど

のキッチンと、さらに奥にはバスルームがあった。居間にはテレビやコンポがあり、たくさ

んのぬいぐるみが飾られていた。そこでプラナム君の家族に生活状況について話を聞いた。

私たちの質問にはプラナム君の母親と祖父が答えてくれた。また二人の他に祖母と祖母

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の妹も近くにいたが、英語によるコミュニケーションが取れず対話はできなかった。祖父は

家族構成や家族がどういう仕事をしているのかについて話をしてくれた。彼らの家は紅茶

プランテーション内にありながら、紅茶産業に従事しているのは祖母だけだった。父親はコ

ロンボで衣類の小売業を営んでおり、その仕送りが主な収入源だという。母親は専業主婦で、

一人で遠出することは慣習的に許されておらず、町に買い物に行くのは月に 1 度ほどだそ

うだ。買い物は彼女の夫が同伴するか、代わりに祖父が行くそうだ。これについて、一人で

買い物に行けないのは不便ではないかと母親に質問したところ、祖父を気にしながら、もう

慣れたとだけ答えた。また、定期的にパーティーが行われるそうだが、女性は参加できない

らしく、このことについても母親にどう思っているのか聞いてみたところ、昔からそういう

ものだったから特に気にしていない、という回答を得た。しかしながら、家長である祖父が

不在だった場合、別の回答が得られた可能性もある。

話の区切りがついたところで、キッチンとバスルームを見せてもらった。キッチンには二

口ガスコンロが設置されていた。また、見えているだけでも 10個以上の鍋があり、ビンに

詰められた調味料が並んでいた。バスルームには 4帖ほどの脱衣所兼洗面所と個室トイレ、

バスタブがあった。脱衣所には壁に掛けられた鏡や歯ブラシ、そしてかまどがあった。風呂

場にシャワーは無く、バケツで水を汲んで浴びているそうだ。

その後、もう一つのプランテーション会社から貸与されている家にも入らせてもらった。

こちらの家の間取りは居間と寝室の二部屋で、どちらも 10帖ほどであった。居間にはたく

さんの写真が飾られており、電話やミシン、食器棚などがあった。寝室にはダブルベッドが

1つ置かれており、その脇に毛布が積み上げられていた。

見学のお礼にフラフープと折り紙をプレゼントした。プラナム君はフラフープで遊んだ

ことがなく、上手くなるには時間がかかりそうだった。折り紙は、私たちが鶴などを折って

披露した。プラナム君の家族はもちろん、近所の子供たちや大人たちも折り紙に興味津々だ

った。

⑤ 紅茶工場見学(鈴木悠太)

<訪問日時:3月 10日午前 場所:ピリマサラワ(キャンディ西方)>

スリランカ滞在の最終日、私たちはペラデニヤ大学のあるキャンディからコロンボへ向

かう途中、ギラガマ紅茶園(Geragama estate)を訪問し、工場を見学した。工場では生の茶

葉を乾燥、発酵させるなどの作業がされており、紅茶の加工はギラガマ紅茶園の内部ですべ

て行われているようだった。 私たちは工場にいるガイドから説明を受けながら、工場見学をすることができた。工場内

では私たちのほかにも、多くの外国人観光客が見学をしており、私たちの横で説明を受けて

いた集団は中国人であるようだった。その時工場のガイドは中国語で説明をしており、多く

の中国人観光客が訪れていることが伺えた。また、工場内には販売所も併設されており、こ

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のような様子から、紅茶工場は紅茶の加工のみでなく、観光産業の一部としても存在してい

ることが見て取れた。 工場では巨大な機械を使って茶葉の選別や茶葉の揉捻を行っており、スリランカでの紅

茶加工は一部機械化されているようであった。ガイドによると、紅茶の加工に使われている

機械は日本製のものが多いようで、日本の製茶産業とスリランカに繋がりがあるという事

を確認することができた。

6.ペラデニヤ大学ジョイントセッション

<訪問日時:3月 9日 場所:キャンディ>

ペラデニヤ大学はスリランカ中部のキャンディに位置する、宇都宮大学と協定を結んで

いる国立大学である。今回の研修においてはペラデニヤ大学の学生とともに、3月 8日に行

ったダラワラ農園におけるインタビュー等の現地調査をもとにジョイントセッションを行

った。テーマについては Gender, Livelihood, Youth Development, Education, Employment

の 5つを設け、それぞれを日本人学生とペラデニヤ大学生混合のグループとした。このジョ

イントセッションからは、日本人学生の視点のみならず、現地学生の視点も織り交ぜて現地

の課題について向き合うことができ、文化や意識の違いからの発見も多くあった。

①Gender(塩原拓也、白毛夏美、須藤花音)

私たちの班は、プラナム君というダラワラの小学校に通う生徒の家に訪問し、ジェンダー

問題について聞き取り調査を行った。そこで彼の祖父と母親に話を聞いた。祖母はかつて紅

茶農園で働いていたが、母親とともに専業主婦をしている。家事は女性に任せられているが、

家計は祖父が管理している。ジェンダーについて聞いてみると、祖父は、農園ではむしろ男

女差が少ないと話し、その理由として男女の教育機会の平等さを挙げた。一方で、女性は男

性の付き添いなしに遠くに買い物に行くことができないらしく、また、パーティーに参加で

きないとのことだった。この状況についてどう思うか母親に尋ねたところ、祖父と視線を合

わせた後、「もう慣れた」と答えた。

その後、この聞き取り調査をもとにペラデニヤ大学の学生とディスカッションを行った。

インタビューの中で、プラナム君の祖父は教育機会の男女平等について言及していた。たし

かに制度上は男女の進学機会は等しいが、結婚や妊娠を理由にドロップアウトしてしまう

女性は少なくない。これについて、私たちが違和感を覚えた一方、原因となっている妊娠・

結婚は本人の意思によるものなので問題ではないという見方がペラデニヤ大学の学生には

あった。私たちが感じた違和感は自分たちの基準にしたがって物事を捉えていたためだと

思われるが、女性の教育をうける権利が侵害されている可能性は否定できない。

また、女性だけで遠くに外出できないことと、パーティーに女性が参加できないことにつ

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いては、このこと自体が問題であるか否かがわからなかった。これらが文化の一部であると

同時に、当事者である女性に不満がないのであれば、干渉する必要性は低いのかもしれない。

ディスカッションをふまえ、パワーポイントとポスターを用いて上記内容について報告

を行った。同じ事象に対してであっても違う見解が生まれることや、当事者周辺に問題意識

がない場合もあることが確認できた。まずは、同じものを見て、認識の違いや意見を共有す

ることが問題だという気づきを得るための第一歩だと思った。

②Livelihood(井上美智、栢元果積、菊池蓮)

Livelihood(生活)のグループにおいては、プランテーション農園内における全体的な生

活水準の向上を目標として調査・プレゼンを行った。3月 8日にダラワラにおいて行った調

査は、祖父母とその子供、また幼児を含む孫世代で生活する家庭を対象とした。この家庭に

おいては、子供世代のうち一人の息子はコロンボに出稼ぎに出ているという。インタビュー

では、何か困っていることや、生活の上で不足しているものがあるかといった質問を中心に

投げかけた。これに対し対象からは、家族人数に対しての家のスペースや給与、水資源、情

報が不足しているとの回答が得られた。またこの他に、仕事中幼い子供を家に残さなくては

ならないといった課題も挙げられた。

訪問において得た印象としても、やはり居住スペースや環境は良いと言える状態にはな

かった。同じスリランカ国内のコロンボやキャンディ中心市街地と比較した場合において

も、格差が大きく感じられた。また、上下水道が整備されている様子はなく、生活排水が通

路横の側溝を流れており、屋内外ともに集住地域の衛生環境は悪く感じられた。一方で電気

は通じていた他、衛星放送のアンテナも散見できた。また、スマートフォンも比較的一般的

な媒体であるということで、情報を取得できる環境自体は整っているのではないかと考え

た。

これらの調査を踏まえて、ジョイントセッション内においては、給与の低さ、インフラの

不足、教育(保育)の不足などを中心に、状況を改善する策を考えプレゼンの方向性を決定

した。プレゼンには模造紙とスライドショーを用いた。模造紙では簡単な現状の課題と発表

の流れを示し、スライドにおいてはより詳細な課題や解決策を示した。

プレゼンの流れとしては 1.Problem 2.Root causes 3.Opportunities 4.Suggeation

5.Conclusionとした。1においては、上で記したような課題について、複数の家庭で共有さ

れる上水用のタンクや、粗雑な作りの家の写真などをスライド上で示し、視覚的に課題が認

識できるようにした。2においては 1の課題の原因であると考えられる給与の低さや地位の

格差などを示し、3では 1の課題を解決するために必要であると考えられる、保育施設や医

療施設の整備、社会構造の変革などを示した。4においては今我々学生に、この状況を改善

するために出来ることを提案した。具体的なものとしては、差別というものそのものの認識

などである。特に、日本の学生に対しては、スリランカ産の紅茶を消費する立場として、日

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本における消費者にもこの現状についての知識を広めていくことが必要であるとした。5に

おいて全体を総括し、ジョイントセッションにおけるプレゼンとした。

③Youth Development(中元晃、本多恵)

私たち“Youth Development”調査班は、ダラワラ農園にて、35歳女性の自宅を訪問した。

彼女は夫と子ども 2 人の 4 人家族で、賃貸の長屋で生活している。彼女は農園内の秘密組

織(団体)メンバーの一人で、農園内の生活環境及び青年問題の現状について語ってくれた。

以下の通りである。

(ア)農園内、約 350名の青年

→結婚後、労働者になる青年は 3名(労働者 69名のうち)

理由:低賃金(1日 500ルピー)

→農園オーナーに 700 ルピーへの賃金アップを請願するが、認めてもらえず。

コロンボ周辺地域への出稼ぎ(主に男性:コミュニティもつ)。

動物、害虫問題

➡農園労働者数の減少。

(イ)副業(縫製工場)

→月 25,000ルピー(残業手当あり)

➡それでも十分な収入は得られない。

(SLにおける一人当たりの GDP:3,835米ドル=672,311ルピー(2016年)

(ウ)支援

→政府からではなく、会社(NGO’s)からのみ生活の支援。

教育(職業)の支援なし。

(エ)早期結婚

→女性は他の地域の男性と結婚し子どもを授かった後、男性から援助を受けられ

なくなることがしばしばある。村に帰っても、家族を支えていくため仕事を行う必

要がある上、家事全般を行わなければならず、問題が山積み。

(オ)薬物乱用

→農園外で働く若者(男性)が、新年を祝う祭りの際、外から薬物を持ち込む。

農園内には、秘密組織(団体)が薬物取締のため活動している。

以上の調査結果から考察した、ペラデニヤ大学生(以下、ペラ大生)と宇都宮大学生(以

下、宇大生)の「青少年育成」についての見解は明らかに異なっていた。

ペラ大生は、農園内での生活の質が向上しないことから“農園で働く労働者の減少”に注

目し、宇大生は、収入を得るという第一目的のための職業選択、すなわち“職業選択範囲”

の狭さと“青年女性の立場”に注目した。

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ペラ大生の見解と宇大生の見解は「労働者を農園にとどめるか否か」という観点では完全

に逆である。このことについて実は、農園に訪問し質問した際すでに勘付いていた。という

のも農園で話されている言語がタミル語であるため、タミル人のペラ大生を主体としてイ

ンタビューしていたのだが、質問の内容が「農園が抱える若者に対する問題」であり、「若

者が抱える社会の問題」を聞くことが殆ど無かったからである。自分たちの質問はその生徒

に、英語からタミル語に翻訳して貰うという形で行った為、思うように伝わらずインタビュ

ーとしては不完全に終わった。

私たちは、農園の若者たちの社会を知る機会が、都市部の若者と同じくらいになれば、彼

らの環境も向上するのではないかと考えた。だが、ペラ大生は、農園内の環境を向上するこ

とで相乗効果的に若者たちの環境は向上すると考えていた。

その後のプレゼンテーション作成時も、「テーマが『Youth Development』であるのに、農

園に『とどまらせる』ことを目標にするのは本題とずれている」と主張したが、なかなか腑

に落ちない様子であったのと、自分たちの英語力と表現力の限界を感じたこともあり、とて

も悔しい思いをした。

このジョイントセッションを通して、農園でのインタビューに関係する事よりも、ペラ大

生との大きすぎる見解の違いが印象に残った。日本では、共存と考えると「同調」や「規律」、

「平等」などを連想するが、三つの民族が共存しているスリランカでは、それぞれの価値観

や見解の存在を認め合い、必ずしも折衷案を必要としている訳ではなかった。このように基

本的なものの考え方が違うので、お互いにディスカッションをしても噛みあわず上手くい

かないという貴重な経験が出来た。今後このような、価値観の相違による見解の大きなずれ

を感じる機会は増えていくと考えられるので、どのように解消すればいいかを考えていき

たい。

④Education(鈴木悠太、藤倉理子、福田真由)

本グループのジョイントセッションは、スリランカの教育問題について理解を深めるこ

とから始まった。スリランカの教育制度を調査して分かった大きなこととしては、そこにお

いて最も重要である進学テストである。

年齢 日本 年齢 スリランカ

6~12 小学校 6~11 Village school (自分の家の近くの学校

に通う)

12~15 中学校(部分的に受験) 11~16 テストの結果で 30%が National school そ

の他が Village schoolに進学する。

15~18 高等学校(各高校によ

る入学試験)

16~19 Ordinary level exam の結果によって

National school/Village school に進学す

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大学独自の入学試験を

受験して大学へ進学。

卒業時に Advanced level examを受けて成

績別に大学へ進学。

11歳で scholarship exam、16歳で ordinary exam、19歳で advanced level examがあ

る。これらは日本の受験のようなものであるが、スリランカでは 19歳までが義務教育であ

り、最低限の教育を受けることができるので、そのシステムに問題はないと思われた。

ただし、進学テストのために tuition school(日本でいう塾のようなもの)に通う必要が

あり、そのための授業料が必要である。よって親の収入や生活状況によって受けることがで

きる教育の質が変わってくる。現地の学生が言うに、すべての学生が等しい教育を受けるべ

きであるのに、tuition school があることによって教育の質に差ができてしまっていると

のことだった。しかし、私たちの意見ではそれは日本も同様であり、問題はないのではない

かと思った。より良い教育を受けるためにお金を払って塾に通うことは日本において当た

り前のことである。

スリランカは現在、かなりの学歴社会である。それは発展途上であり、モノカルチャー以

外の産業開発のために高学歴かつ多様な人材が必要とされるようになったためである。こ

れから経済成長をしていくにつれ、国が潤い、さらに高学歴な人材が求められれば、大学が

増え、その教育を受けることのできる人も増える。どの国も発展段階ではこのような経緯を

経ることから、スリランカもその状態にあると思われる。

⑤Employment(前島早希、吉野匠)

まず、農園の労働者にインタビューした。6 人

家族の父親の方にお聞きしたところ、農園の仕事

だけでは、子供達を大学に行かせることができ

ず、自分の子供も自分と同じような低所得な仕事

につかなければならなくなることを嘆いていた。

また農園の労働者たちは、朝七時に起き、夕方四

時までほぼ休みなく働くために、肉体的にも辛

く、そして親の代もお茶摘みをしてきたため、農

園の労働者になる以外に道はなかったと話して

いた。

このように、労働者たちは沢山の問題を抱えて

いることがわかった。したがって、私たちは、現状の課題に上図のような負の循環があるこ

とを発見した。よって、ペラデニヤ大学の学生と話し合い、以下の解決案を提案した。

① NGO のなかでは、労働者が農園の仕事以外にも、手に職が持てるように教育をしている

団体もある。したがって、これらの団体と同じように労働者に教育をし、お土産の小物

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作りなどのように、お茶畑での労働以外の選択肢も選べるようにする。

② 会社が給料を上げて、福利厚生を充実させる。現状だと家族を養うためには給料は充分

とはいえず、福利厚生もないため、粗雑な住宅に住んでいる。したがって、会社が主導

する形で労働環境を改善するべきである。

以上の二つを提案し、労働環境改善を呼びかけた。

また、海外の学生とディスカッションし、意見をまとめ上げ、プレゼンテーションを行う

というのは初めてだったため、とても勉強になる良い経験だった。だが、異なるバックグラ

ウンドを持つ人たちと第二言語を用いながら議論することは、意思の疎通の難しさや文化

が違うため、かなり大変だった。

我々はデータを用いながら現実的な解決策を提案するが、日本とは違い、全体的に非現実

的な解決策を提起してきたため、数字を用いて折り合いをつけることに苦労した。また、そ

のような状況でいかにしてチームをまとめるかが困難であったとともに、勉強になったと

ころだった。このようなシチュエーションでの議論を上達するには回数を重ねるのみだと

考えるので、更に実践を重ねていく必要性を感じた。

7.まとめ(菊池蓮、塩原拓也)

今回の現地研修全体を通して学んだことが、大きく3つある。第一は、スリランカ国内の

想像以上の格差の大きさである。JICA や IOM、在スリランカ日本国大使館の位置する、ス

リランカ最大の都市コロンボには、高層ビルが立ち並び、先進国と呼ばれるような国々と比

較してもそう遜色のない成長度合いであった。しかし、それが一度街を出て、内陸部へ進む

ごとに高層ビルはなくなり、整備の行き届いていない地域が目に付くようになった。第二の

都市キャンディでは、整備された建物などが見られたが、それも農園に向かって進んでゆく

と道路状況や生活環境は悪化していった。最終的に私たちが目にした、インフラの整備や給

与も不十分な紅茶農園と、中心地コロンボとの格差は、同じ国の中とは思えないほどであっ

た。 紅茶農園における貧困や格差を解決するためには、上記のような国内全体の構造的な格

差を解決することが必須であるのではないだろうか。また、そのためにも、スリランカにお

いて豊かな暮らしを送っている人々と、貧しい暮らしを送っている人々の双方が格差を認

識できる環境づくりが必要であるとも考えられる。 第二に、ペラデニヤ大学学生との間の認識の差である。ジョイントセッションからは、例

えば男女間の差別問題について、私たちが持ち合わせているほどの問題意識はないように

感じられることがあった。また、生活など農園の環境に関する課題については、日本人学生

は農園を含んだ社会全体の課題ととらえていたのが、現地学生は農園単体の課題として捉

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え、彼らの生活するスリランカ社会とは別物ととらえているようにも感じられた。このよう

に、プランテーション農園とその他のスリランカの地域の格差や差別について、彼ら現地の

学生からは、それが当たり前であるというような感覚が感じ取れたのである。 その状態が当たり前となってしまい、問題意識を感じないというのは私たちにもあり得

ることであるが、そのような状態から問題意識を芽生えさせ、状況を改善していくことは容

易ではない。このような状況を打開するためにも、JICA の行っている草の根事業のような、

地域との距離が近く、慣習や常識とのかかわりの深い開発事業が重要であると考える。 第三に、教育の可能性の大きさである。今回の研修では青年海外協力隊の野球隊員の方の

活動と環境隊員の方の活動、そして JICA が支援している課外活動プログラムという 3 つ

の教育に関連した活動に参加、もしくは見学した。活動はいずれも幼稚園児から小学生を中

心の対象としており、この年代の子供に対して教育された知識や経験というものは、この先、

子供が社会へ出た時の行動指針の基礎となるものであるだろう。つまり、子供たちが社会の

中心となったとき、正しい選択をし、社会をよりよい姿へと導いていくためには、私たちが

参加、見学してきたような活動が重要であるとも言える。 また、今回の研修で見ることができたスリランカにおいての多くの課題には、国際連合の

掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」との深い繋がりを持っているものが多い。まず、

IOM や JICA 事務所など、開発の現場を訪問して感じたのは、目標 16「平和と公正をすべ

ての人に」と目標 17「パートナーシップで目標を達成しよう」の重要性である。IOM にお

いては周辺諸国と協力した移民・難民への支援を行なっており、JICA は日本の開発組織と

してスリランカ国内の開発課題のために活動をしていた。また、青年海外協力隊のような、

個人レベルでの国境を超えた活動も見ることが出来た。このような点からは、国家や国際機

関同士が協力しあっての国際開発や安心して暮らせる社会づくりがなされているのを見る

ことが出来た。 SDGs という点については、紅茶農園においては特に多くの成果や課題を見つけることが

出来た。まず、JICA が支援している草の根事業などは、紅茶農園の子供達により良い教育

を提供するためのものであり、目標 4 の「質の高い教育をみんなに」に大きく貢献している

と言える。また、プランテーション内部の生活環境については目標1「貧困をなくそう」や

目標 6「安全な水とトイレを世界中に」の目標を達成できていないと言えるような不十分な

有様であった。そして、このような状況の紅茶農園で生産された紅茶を日本やその他先進国

は輸入し、消費している。このような構図からは目標 12 の「つくる責任つかう責任」の重

要性を見ることができる。 結びに、今回の研修の中ではスリランカ国内における多くの格差を見て取る事ができた。

そして、ペラデニヤ大学とのジョイントセッションにおいてそれらの課題に向き合った時、

感覚や常識の違いが課題解決の障害となっている事がわかった。そのような課題の原因と

なるような常識や感覚はやはり、幼少期の教育に左右されるものであり、教育の重要性が感

じられたことは上記に記したとおりである。このような課題を解決していくためにはやは

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り、SDGs のような国際的かつ包括的な目標が重要なアクターを果たしていると感じた。

8.個人の感想と今後

・国際学部国際学科 栢元果積

スリランカでは、IOMや、日本大使館、JICA、紅茶農園などを訪問し、とても内容の詰ま

った研修となった。JICA の青年海外協力隊の活動見学は、私にとってとても印象的であっ

た。言葉がよく通じない状況であったが、野球を一緒にしたことで、楽しいという感情を共

有することができた。野球をする子供たちや協力隊の方々はとてもいきいきしていた。また、

ペラデニヤ大学の学生と一緒に紅茶農園を訪問した。農園で働く人たちにインタビューを

し、紅茶農園の課題を見つけ、ジョイントセッションをした。私たちとペラデニヤ大学の学

生とで、考え方に違いが見られた。

紅茶農園を訪問し、現地の状況を理解することで、改めて紅茶農園の問題の深刻さに気づ

くことができた。消費者として、今後どうあるべきか考えて行く必要があると思う。また、

スリランカの紅茶農園の問題をいろんな人に知ってもらう必要があると思う。

・国際学部国際学科 菊池蓮

私は今回のスリランカ研修以前から、学内においてスリランカ関連のプロジェクトに参

加していたが、実際にスリランカに行くのは今回が初めてであった。これまで写真などで見

ていたプランテーション農園に立った時に感じたものは、想像していたよりも生活環境が

整っていないということであった。家屋の粗末さや道路状況などからは、日本にいて話を聞

き、写真を見るだけでは感じられない状況の深刻さを感じた。

本研修の中心でもあるペラデニヤ大学学生とのジョイントセッションにおいては、プラ

ンテーションに対する認識の違いを感じた。私の担当は Livelihoodであり、生活水準を高

めることなどを中心としていたが、現地の学生はあくまでプランテーション内部とその外

側とを切り離して考えているようであった。彼ら(現地大学生)とプランテーションの人々

との間の階層的な考え方を、良くないと感じている日本人学生の考え方との間には、多少な

りとも隔たりがあった。しかし、その階層的な考え方は現地の人々にとってごく当たり前な

もので、そこに問題意識が芽生えるということのほうが難しいのかもしれない。

今回の研修を踏まえて、私は今後の大学生活や人生において大事にしていきたいと感じ

たことがある。第一には、実際に経験することである。今回の研修前にも、スリランカにつ

いて多くの写真を見る機会があったが、実際にその場に立つ前と立った後では、現地に対す

る問題意識などに大きな変化があった。今後、自分が関係する海外の地域があれば、実際に

行ってその場の状況を、身をもって経験することを心掛けたい。

第二には、自らの常識を客観化することである。今自分が常識としている行動や思考は、

当たり前であるがこの世界全員の常識ではなく、時にはそれが、文化や慣習で片付けられな

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いようなことであるかもしれない。自分が指摘する側に立っているときのみならず、指摘さ

れる側であるときについても考え、客観的に見た時に、自分の行動や思考が正しいものなの

か判断できるようにしていきたいと思う。

・国際学部国際学科 塩原拓也

スリランカ研修を通して、スリランカの文化や生活などを実際に見るなど、体験すること

ができた。例でいうと、スリランカの主食はカレーだが、カレーを手で食べるというのはス

リランカではごく一般的なことだ。が、最初はやはり抵抗があった。しかしすぐに手で食べ

ることには慣れ、自分にとって新しい食事作法を体験できた。一番印象に残っているのはダ

ラワラの紅茶農園で生活している人の自宅訪問だ。事前に調べた情報や想像していた何倍

も厳しい環境で生活していた。舗装されていない道路や共同トイレなど、もし自分がそこで

生活するとなったら耐えられないレベルだった。このように実際に厳しい状況を自分の目

で見たことで問題解決への意識がさらに高まったとともに、自分からもっと積極的にこの

問題解決に向けて動かなければならないなという使命感も感じた。 また、青年海外協力隊の活動訪問では、幼稚園でごみの分別について子供に教えるなど、

野球指導教員は小学生に野球の楽しさやスポーツの良さの一つでもあるチームワークの大

切さを伝えていた。実際に私たちも野球の練習に参加し、試合まで体験させていただき、と

ても楽しむことができた。スポーツの良さは世界共通だとした実感した。 全体を通していえることは、何事も自分の五感で体験することはとても大切であるとい

うことだ。スリランカ渡航前からスリランカについてはかなり詳しく調べていたし、ある程

度このような感じなのだろうと想像していた。しかし、実際は想像していたこととはかなり

違うと感じたことがほとんどだった。今回私たちが焦点にあてた男女格差や労働環境とい

った問題は、スリランカのみならず多くの国で起きていることである。この先また別の国に

ついて詳しく分析することになったとき、できれば実際にその国へ行って自ら問題をこの

目で確かめたりすることに努めていきたいと強く感じた

・国際学部国際学科 白毛夏美

私は、スリランカに到着して、多くのごみが道端に捨てられていることにとても驚いた。

日本でずっと暮らしてきた私にとって、街なかに雑然とごみが放置されているのは、見慣れ

ない光景だったからである。スリランカでのバスの移動中、窓から外を眺めると、自然とご

みが目に入った。その度、捨てている人は何も思わないのか、いったい誰がこの大量のごみ

を処理していくのだろうかなどと、気になっていた。 しかしながら、スリランカ第二の都市であるキャンディ市は、とてもごみが少なく、清潔

感があるように思われた。その理由は、キャンディ市内で青年海外協力隊の環境隊員として

活躍なさっている植村様が、夕食会のときに教えて下さった。植村様によると、キャンディ

市は世界遺産であることから、景観保全の意識が行政機関にあることが、スリランカの他の

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地域と大きく異なる点である、とのことだった。実際に、行政機関は、市内のごみ回収シス

テムの改善や、住民の環境意識の構築に取り組んでおり、植村様はそのサポートをしていら

っしゃっているそうだ。植村様との多くのお話を通じて、ごみが溢れていない衛生的な環境

が自然発生的でないことや、様々なアプローチで問題の解決に貢献できることを知ること

ができた。 ごみ問題に限らず、訪問した各所で、自分の中の当然がそうではなかった、という場面に

出会った。私は、今後、あたりまえのように思えたとしても、批判的に捉えるよう努めたい。

加えて、問題に対しては貪欲に解決を目指していきたいと思う。

・国際学部国際学科 須藤花音

スリランカ民主社会主義共和国での海外演習は、非常に有意義なものであった。実際に現

地に行くことで初めて学べることが多々あるということを実感したからである。

例えば、インジェストリ農園では不衛生かつプライバシーのない共同トイレやシャワー

兼水道が屋外に設置され、間取りも狭い長屋に、農園労働者とその家族が暮らしている。実

際にインジェストリ農園を訪問し、彼らと交流したことで彼らの存在をより近くに感じら

れた。そして日本と比較すると不自由に感じられる、そうした環境で生活する彼らの生活状

況を向上させたいと思った。また同時に、当事者の考える問題と、その改善のための手段や

支援は、我々の考えるものと異なる可能性があるため、彼らの意向を汲んだ支援をすべきと

考えた。

一方で反省点もある。ダラワラ農園での子供たちとの交流やペラデニヤ大学の学生との

ジョイントセッションのための調査において、反省点を 3つ挙げたい。まず、調査時間が限

られており、また 1 家族のみを対象とした聞き取り調査では得られた情報の数は少なかっ

たため、その信憑性や普遍性を確認できなかったことである。次に、私達の班はジェンダー

問題を調査したが、調査対象となる女性と同じ部屋に彼女の父親もいたことが回答に影響

を与えた可能性があることから、場所や人数の調整をすべきであったことである。最後に、

調査前にペラデニヤ大学の学生と具体的な質問内容を確認すべきであったことである。彼

らと私たちの間で情報共有が不完全であったため、調査の全体像を把握しきれていなかっ

たことが、その後のジョイントセッションに悪影響を与えていた。次回の海外研修に参加す

る学生には、上記のことを踏まえ調査の改善に役立てて頂きたい。

全体を通して、以前は普段の生活の中で意識することのなかった紅茶農園の人々や彼ら

の暮らしを、この研修へ参加し実際に見たことで、そこにある問題の深刻さをより身近なも

のとして意識することができた。今後は世界規模の社会問題を扱う際に、より多様な立場か

ら、その最善の解決策等を探ることができると思う。

・国際学部国際学科 鈴木悠太 私達はスリランカ研修で、現地の NGO 職員、青年海外協力隊員、茶園の子供たちと触れ

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合い話し合いを行ったが、現在最も印象深いことは、発展段階にある国の不安定さについて

である。今回私たちは、スリランカでは現在急速な開発などが進み、様々なセクションで

様々な計画が実行されているという事や、スリランカの発展性に関して多くのことを学ん

だが、私たちの帰国後の 4 月 21 日、スリランカではコロンボなどのキリスト教会、ホテル

が爆破されるテロが発生した。このテロの影響で、現在スリランカでの青年海外協力隊も活

動は停止されており、他の様々なプロジェクトに関しても一時停止ないし、撤回という形に

なってしまっていることも考えられる。 今回のこのような事態から私は、以前講義で学んだ観光産業を主産業にするという事の

不安定さと不確実性に関して実際肌で感じることとなった。スリランカに滞在していた間、

このような事件が発生するような予兆などは全くなく、少しずつではあるが観光などの産

業によって確実に発展を進めている国の姿を私は見てきた。しかし、現在スリランカがどの

ような方向へと向かって行くのか予想のできない状態にあると感じる。 私は、今回の研修とその後のスリランカの状況を見聞きした経験から、途上国における平

和は非常に不安定だという事も感じた。今後、支援やグローバルガバナンスについて考える

ときはこのような現実も踏まえつつ、より多角的な考察をするように心がけていきたいと

考える。

・国際学部国際学科 本多恵

今回のスリランカ研修の中で、特に紅茶農園での小学校見学や生徒のお宅訪問、ペラデ

ニヤ大学生とのジョイントセッションは思い出深い。小学校訪問からペラ大生と合同プレ

ゼンテーションを行うまで、2 日間と短期間であったが、何度も「驚き」や「悔しさ」と

いった感情が沸き起こった。

研修前にスリランカ紅茶農園について事前学習を行っていたが、自分の目で見る労働者

の姿や農園内の人々の生活状況には衝撃を受けた。裸足で働く労働者や彼らが住む家(長

屋)の屋根部分やトイレを見て、前日に見かけたスリランカ繁華街の家や人々との、あま

りにもかけはなれた状況が目に焼き付いた。そして彼らが抱える青少年育成問題を、ペラ

大生と共に、ある主婦の方へのインタビューを経て解決策を考察する機会では、ペラ大生

側と宇大生側の、考えの前提にある知識や問題の捉え方の違いに困惑してしまい、自分の

意見をうまく伝えることができなかった。加えて、私と彼らの英語力の差が顕著に表れ、

英語力と発言力の無さにとても悔しい思いをした。

研修を終えて、私が真っ先にやることは「英語力の向上」である。国際的な問題にして

も何にしても、自分と使用する言語が違う相手と議論するには、今段階での主要な連結語

である「英語」が重要である、とこの研修で痛感した。

そして、この研修で学んだ「スリランカの実情」を、UU-TEA プロジェクトなどを通し

て、まずは日本国内に伝える活動に積極的に参加していきたいと思う。

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・国際学部国際学科 前島早希 スリランカという国に実際に行くことで経験できたことや、現地の人と会うことで初め

て知ることがたくさんあった。私自身、日本に比べて発展の進んでいない国に行くのは初め

てだった。日本で普通に暮らしてれば、知ることのできない世界を知ることができた。 お茶畑で働いている人の暮らしぶりは、私の想像以上に過酷なものだった。トイレは私た

ちが日本で使っているものとは全く違うものであり、もちろんエアコンもない。私たちの普

通で、当たり前の暮らしが世界共通の当たり前の生活ではないのだということを改めて実

感することができた。 また、ペラデニヤ大学の学生との合同調査では、直接お茶畑で働く人に話を聴くことができ、

データで見る情報とは違い、生の情報を得ることができた。私たちが普段飲んでいる午後の

紅茶などの商品は、お茶畑で働いている人の大変な暮らしによって支えられており、あのよ

うな価格で紅茶を手軽に飲むことができる理由を理解することができた。お茶畑で働くお

父さんは子供を大学に行かせることもできないため、子供達も自分と同じお茶畑の仕事に

つくしかないと話していた。より高度な教育を受けなければ、より良い仕事につくことが難

しい。これは日本においても同じだと感じた。 さらに、青年海外協力隊の隊員との交流で、隊員の方々が青年海外協力隊になった経緯や

任期が終わってからどうするのか、また、任期中の経験などについて話をきかせていただい

た。平凡な学生生活を送っている私にとって、とても刺激的な話だった。もちろん、スリラ

ンカと日本に環境の違いはあるが、日本が本当に平和で平凡な国だということを実感した。 様々な人と会い、話を聞く機会は日頃の生活にはないため、私の学生生活にとって記憶に

残る貴重な経験になった。また、これから残りの学生生活でももっと色々な人に出会い、

色々な話を聞き、自分の世界を広げていきたい。そのために私は、何事にもチャレンジし、

誘われたら断らずに、色々な経験をしていきたいと考えている。 ・地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科 藤倉理子 初めに、今回スリランカ研修に行く機会を与えてくれた大学、先生方に感謝を述べたい。

自分で行くことはできても、行って何をするかが一番重要である。今までもホームステイを

したことがあり、観光と学びでは行く価値やその後の思い入れが全然違うことを実感して

いた。スリランカにおいても、観光で行くのとは全然違っただろうと強く思う。実際に現地

の仕事を見たり、住民と交流したり、文化に触れたり、現地の大学生と課題に向き合ったり

したことで、知らなかったことを知り、常識を覆され、海外で学ぶことの面白さ再認識する

ことができた。 全ての日程において、興味深く学んだことが多かったが、仕事と国際協力の在り方の二つ

に絞って感想をまとめたい。 まず、今回の研修では普段話を聞けない職業の人に多く会った。IOM、大使館、JICA、

JOCV、海外で起業した人、海外に駐在している会社員など様々な人と話すことができて、

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会食をセッティングしてくれた栗原先生にはとても感謝している。海外で働くことも視野

に入れていたので実際に海外で色んな職種で働いている人を見て、自身の将来を考える機

会となった。起業、JOCV、国連機関においては最初から海外生活が確定していて、場合に

よっては住む国もあらかじめ想定できる。国家公務員の海外駐在、会社の転勤、JICA 職員

は拠点が日本で自分の意向で海外に行けたり、転勤が命じられたりすることが多い。海外で

働きたいと言っても行くまでのパターンが複数あることを改めて感じたり、時には思って

いたのと違うことが分かったりして貴重な経験となった。 次に国際協力の在り方についてである。ジョイントセッションで、教育の課題を取り扱っ

て、現地の人と問題の捉え方が違い、事実を調べてみると、そこまで問題ではないのではな

いかというカオスに陥った。途上国の教育問題と聞いて、教育を受けることができない、質

がひどく悪いというイメージを勝手に持ってしまっていたが、実際は進学に格差はあるも

のの、制度は整っていて、日本よりも進んでいるのではないかと思ったほどだ。また、中国

による開発現場を街中でよく見かけた。莫大な費用を負担しているらしいが、その建設は強

引で、経済的に不利なスリランカは圧倒的に弱い立場である。このように他国の支援という

のは、はたから見たら優しい行為かもしれないが、実際の内状を知ると変わってくる。まち

づくりを学んでいる者として、まちづくりに定形はない、それぞれのいいところを引き出す

ということを思い出した。まちづくりに必要な 3 要素に「よそ者、若者、ばか者」というの

がある。よそ者は確かに必要だ。しかし、国のポテンシャルや制度はそれぞれ違うから、自

分の国に近づけるような支援ではなく、その国に合う施策が必要だと感じた。

・農学部応用生命化学科 井上美智

このスリランカ研修では、多くの貴重な体験をさせていただいた。

始めに、IOM や JICA など様々な分野で支援活動を行っている方々に直接お話しを聴くこ

とで、その活動に対する強い熱意を感じた。また、素朴な疑問にも答えていただけたため、

活動開始までの経緯や活動内容、現地での暮らしの様子といった気になることをより具体

的に知ることができた。自分の将来の選択肢を増やすこともでき良かった。

次に、スリランカの紅茶農園に行って、この目でそこで暮らす人たちの様子を見たことで、

問題を理解する難しさを感じた。どのような場所かわからなかったこともあり、初めて見た

ときは「ある程度の生活はできるな」と感じた。しかし、ディスカッションや考え直しをす

る中で、色々な面で不足しているものがあることに気づいた。インターネットで調べても、

現地の人から話を聴いても、私が実際に行っても、それぞれの見え方、捉え方から、見逃さ

れる問題点や不明な点はきっとたくさんあるのだと思う。それらを見逃さないために、それ

ぞれの情報の欠点を考慮し、ちゃんと発見するよう心がけていきたいと感じた。

そして、ペラデニヤ大学の学生と問題解決に取り組んだことで、現地の人と協力する良さ

を改めて実感した。それは、インタビューやディスカッションでスリランカのことをよく知

るペラ大生が私たちをリードし、手助けしてくれたおかげでうまく進められたと感じたか

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らである。また、ペラ大生と私たちの間の考え方の違いから、新たな視点で見ることができ

たためでもある。このように現地の大学生と一緒に問題に取り組む機会がさらに増えると、

様々な問題の取り組みがスムーズになるのではないかと思った。

最後に、このスリランカ研修を通して「これからやりたいこと」がある。それは、スリラ

ンカの農園を応援することである。この研修に参加したご縁で、私は UU-TEAというスリラ

ンカの農園を支援する団体に参加した。この経験が、スリランカの農園に良い変化をもたら

すような力となるよう、自分にできることから始めていきたいと思う。

・農学部農業環境工学科 中元晃

私はこのスリランカ訪問の前に、同じく多民族国家であるマレーシアを訪問していた。そ

こでは共通言語である英語を、国民の大半が日常的に使用しており、民族間の距離は意識し

ない限り感じられなかった。そのような形で「多民族共生」を目の当たりにした事もあり、

スリランカでは衝撃を受けた。彼らは(連結後として英語があるが)各民族で別々の言語を

使用しており、明らかに民族間の距離が感じられた。今までに感じたことのないピリッとし

た空気を感じることもあった。しかし、それぞれが別々の価値観の中で生活していても、そ

れは多民族共生の一つであり、決して排他的ではないと感じられた。お互いが同調や価値共

有だけが平和的な共生を可能にするのだという今までの無意識的な価値観を変えるとても

大きな学びを得ることが出来た事は、このスリランカ研修が有意義であったと思える最も

大きな理由だ。 今後この経験を生かせる場面は明確に挙げることは出来ない。しかしそれは多くの学問

において言える事であり、学んだ事はそのまま活かす事は出来ないことの方が多い。今回得

たのは、「共生」についての無意識的な価値観の変化であった。それを抽象化し、「今現在持

っている目的を果たす為の行動に関する無意識的な価値観は、必ずしも一般的ではない」と

いう風に捉えると、今後のあらゆる活動に応用でき、今研修がなければ思いつけなかったア

イデアに出会えるかもしれない。

・農学部農業環境工学科 福田真由

今回のスリランカ研修で日本では得られなかった貴重な経験をすることができた。最も

印象に残ったこととしてペラデニヤ大学の学生とのグループワークが挙げられる。インタ

ビューをする際、現地の学生に通訳してもらったが、自分たちが質問したいことを伝えるの

ではなく、勝手に彼らが質問をしてそれを聞くという形になってしまった。インタビューが

彼ら主体になってしまったのである。知りたいことを知ることはできたが、自分たちで質問

できなかったことが悔しかった。シンハラ語、タミル語を理解できない以上、言語の面にお

いては頼るしかないが、彼らのペースでインタビューが進んでしまっていたように感じた。

ディスカッションにおいても同様であった。このようになってしまった原因は言語だけ

ではないと感じた。自分たちの勉強が足りていないことに加え、経験の差もあったと思う。

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話をしていると彼らは専門の分野でないことも幅広く知っており、自分の知識のなさを痛

感した。さらに現地の学生と交流して、教育に対する考え方が大きく異なっていることに気

づいた。大学の数が少ないため、競争率が高く、教育の重要性に関しての意識が高い。スリ

ランカの教育に関しての説明を受けた際、より上を目指そうとする意識が強いと感じた。

ここでの経験を通して、自分の足りてない部分を発見することができた。まず早急に必要

なのは英語力である。未だにスムーズな会話ができていないのは問題である。現地で紅茶プ

ランテーションを実際に見て、表に出ているイメージと裏の現状のギャップがあることを

知った。しかし、日本はその産業に頼っていながら、まだ改善につながるような支援ができ

ていないように見えた。私は環境保全の面で、形だけの支援ではなく、結果として明確に現

れるような支援をできるようになりたい。

・農学部農業環境工学科 吉野匠

私が 14 日間のスリランカ研修を通じて学んだことは大きく分けて次の 3 点である。1 つ

は IOM や JICA、大使館訪問を通じて異国で働くこととはどのようなことなのかを実際に拝

見することができたことである。私は今回の一連の研修が初の海外渡航であったため、海外

で働くことには興味があったもののそれがどのようなものなのかをよくわかっていなかっ

た。以前には、英語力が絶対的に必要だと考えていたが、それよりも場をまとめる能力や積

極的に発言し、自分の意見、主張を受けいれてもらうための話し方、表現方法が大事なこと

だということがわかった。

2点目はお茶畑の労働者の自宅におじゃましたことだ。私たちが普段飲んでいる午後の紅

茶などで使われているお茶畑を訪問したが、生産者の方々の住んでいる家が想像以上に劣

悪な環境で本当にショックであった。そして大元の紅茶会社が搾取をしていて、それが生産

者の貧困を生んでいる関係性を把握した。ペラデニヤ大学の学生とも話したが、その関係性

を国は黙認しているとのことで、そのお茶を頻繁に利用している私たちも人ごとではなく、

この事実をもっと日本に広めなくてはならないと考える。

3点目は、現地学生とのディスカッションを通じて学んだ、チームをまとめる能力の必要

性だ。今まで何度も他国の学生と英語を使いディスカッションをしたことがあったが、どち

らかというとチームのフォローに徹する方が多かった。理由としては他のメンバーのリー

ダーシップが素晴らしかったのもあるが、英語力の低さが一番の理由だった。しかし、今回

の場ではその時に比べて自分の意見を英語で伝え、議論をするということに抵抗がなかっ

たことや、農学部というバックグラウンドもあり、逆にチームをまとめる役に徹する必要性

が出てきた。海外の学生とのディスカッションの中でそのようなポジションにつくのは初

めてであったため、とても苦労した。上述のように自分の意見を通す表現方法が足りないこ

とや、リーダーシップを取る大変さを感じた。これは今後の自分の課題であると考える。

このようにスリランカ研修を通じて、沢山のことを学んだ。上記のように課題もたくさん

見つかり今後としては、

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① 今まで以上に海外学生とのディスカッションなどに参加し、回数を重ねてチームを

まとめる力の上達を図る。

② スリランカの茶畑の現状を、報告会などを通じて日本人に伝える。

この 2点を今後も反省点として実行していこうと思う。