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フラットニングフィルターフリー (FFF)ビームの特性について 鳥取市立病院 坂本博昭

フラットニングフィルターフリーtottori-rt2015.sakura.ne.jp/data/FFF.pdf1. Octaviusを用いてFFFビームについて線量率 の出力の一貫性に問題のないことを確認

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フラットニングフィルターフリー

(FFF)ビームの特性について

鳥取市立病院 坂本博昭

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フラットニングフィルタ(FF)の歴史的背景

MV領域での光子の制動放射分布は指向性

を持っている

任意の深さで平坦な線量プロファイルを得

る為にFFが用いられた

ビーム全体の均一な分布は、複雑な計算が

コンピュータでできなかった時代に線量計算

を容易にさせた

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FFの有無

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FF無のエネルギー毎の線量分布

エネルギーによってプロファイルが異なる

→エネルギー毎にFFが存在する

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フラットニングフィルター(FF)とは

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FF透過後のビームプロファイルの変化

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FFがなくても

もともとフルエンスパターンが変調されて処方されるIMRT

平坦な線量分布領域をもたない極小照射野を用いた定位照射

歴史的に過去50年にわたり用いらてたFFが必要ない

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FFの利点

線量率が高くなる(短時間治療)

ヘッド散乱が減る

→コリメータ散乱、コリメータ反転効果

→ヘッドのsimulationが容易に

→(γ,n)反応の中性子が減る

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FFの欠点

線質の軟化により皮膚線量増加

均一な線量分布ではない

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FFFの加速器

トモテラピー サイバーナイフ

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FFFの加速器

Varian社製 TrueBeam

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FFFの加速器

Elekta社製 Versa HD

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FFFビームの基本物理特性

深部線量

PDDはFFビームに比し、ビームハードニング

の影響がないため、指数関数領域で急峻な線

量低下曲線をたどる

FFFビーム(6MV)→FFビーム(4-5MV)

FFFビーム(18MV)→FFビーム(15MV)

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FFFビームの基本物理特性

深部線量

FFビームとFFFビームの最大深はほぼ同じ

TrueBeam(6MV)の仕様書(SSD:100cm、Fs:10×10cm)

FFビームの最大深:1.6±0.15cm

FFFビームの最大深:1.5±0.15cm

FFビームでは照射野が大きくなるにつれヘッドの散乱線の影響で最大深が浅くなる

FFFビームはその影響が小さい

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FFビームの基本物理特性

深部線量

ビームハードニング効果がdmaxを深い側へ移動させる一方、光子ビーム散乱線の高い寄与がdmaxを減少させる

結果的にFFFビームの最大深と大きな相違がなくなる

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FFFビームの基本物理特性

深部線量

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FFFビームの基本物理特性

深部線量

現状のFFビームを用いた臨床条件に合わせるため、FFFビームの10cm深の深部線量をFFビームに合わせる(エネルギーマッチ)報告もある

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FFFビームの基本物理特性

線量プロファイル

FFFビーム線量プロファイルは凸型の形状となるが、エネルギーと照射野により変化

ただし、

6MVで4×4cm

10MVで3cm×3cm

以下の小さな照射野ではFFビームとFFFビームの線量プロファイルはほぼ一緒

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FFFビームの基本物理特性

線量プロファイル

FFFビーム線量プロファイルは凸型はエネルギーが高くなるほどピークが尖る

エネルギーが高くなるほど散乱角度が小さくなるため

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FFFビームの基本物理特性

線量プロファイル

6MV 10MV

照射野:3~30cm 測定深10cm

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FFFビームの基本物理特性

線量プロファイル

従来のFFビームは治療深(10㎝深)で平坦となるように最大深では「ツノ(horn)」を示すようにturning

一般にFFビーム「ツノ」は8%以内

FFFビームの線量プロファイル形状は深さに対して2~3%

それは…

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FFビームの基本物理特性

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FFFビームの基本物理特性

線量プロファイル

FFビームは広がりと共に線質が軟化することで深さ方向とともに線量プロファイルの形状が変化するが、FFFビームではその影響は小さい

6MV 10MV

照射野:30cm

深さ:最大深・5・10・20・30cm

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FFFビームの基本物理特性

出力係数

Scpは照射野サイズによる1次光子フルエンスの変化の指標なので、FFの材質、大きさ、形状の影響を受ける

FFFビームでは照射野の大きさによる変化が小さい

照射野:3×3㎝~40×40㎝でScpの変化

6MV FFビーム:8% FFFビーム:3%

18MV FFビーム:7% FFFビーム:1%

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FFFビームの基本物理特性

出力係数

6MV 10MV

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FFFビームの基本物理特性

表面線量

FFFビームは線質が軟化するため、FFビームに比し表面線量が増加する可能性がある

一方、FF由来の混入電子・散乱光子が減少し表面線量を減少させる要素も備えている

FFFビームの表面線量はFFビームに比べ小さい照射野で高くなり、大きい照射野で低くなる傾向がある

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FFFビームの基本物理特性

表面線量

6MV 10MV

0.5㎜深において最大深ノーマライズ

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FFFビームの基本物理特性

照射野外線量(辺縁線量)

FFFビームはFFによるヘッドからの漏れ線量が減少し、辺縁線量の低減が期待できる

6MVのFFFビームでICから50㎝と100㎝の位置で平均60%線量が低減できたと報告あり

小児頭蓋内腫瘍のIMRTプランの検討で、FFビームに比べ、甲状腺(24%)・肺(30%)・卵巣(65%)・精巣(70%)の被曝線量を低減てきたとの報告があり

二次発がんのリスク減少

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FFFビームの基本物理特性

二次発がんのリスクがありながら周辺線量が高い精度で計算できない理由

ヘッドからの漏れ線量は通常のヘッドのモデリングで考慮されていない

フルエンス情報から周辺線量を導き出すモデルがない

ヘッドからの漏れによって影響を与えるのは照射野端から15~20㎝離れたところといわれておりFFを取り除くことで50~60%減少する

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FFFビームの基本物理特性

照射野外線量(辺縁線量)

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FFFビームの基本物理特性

中性子の発生

10MV以上の光子がヘッド内の高原子番号物質(プライマリコリメータ、ターゲット、FF、jaw,MLC)

と相互作用し副産物として中性子を発生

18MVの前立腺IMRT(TrueBeam)で中性子が70%減の報告

一方10MVでの中性子の減弱効果は僅かであり、FFFビームにおける中性子減弱という利益には慎重に対処した方がよい

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FFFビームの基本物理特性

線量率による出力の一貫性について

Varian社の方法

最大と最小線量率並びにその間の二つの線量率において出力の一貫性が1%以内であることを年に一回確認

10MVのFFFビームにおける線量率による出力の一貫性

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FFFビームの吸収線量測定時の注意点

AAPM TG-51 addendum では標準機準条件

(SAD:100㎝、照射野:10㎝×10㎝)であれば

AAPM TG-51が適用可

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FFFビームの吸収線量測定時の注意点

線量計について(電離箱)

AAPM TG-51 addendum では線量平坦度が劣るため、平均体積効果の影響を避ける為、長さの短い電離空洞をもった電離箱の使用を推奨

ただしマイクロ型電離箱は原子番号の高い中心電極の材質である場合があり、使用が推奨されていない

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FFFビームの吸収線量測定時の注意点

線量計について(半導体)

線量率依存性を示すものがあり、高線量率の出

力も可能なFFFビームの測定に際しては事前の

検証が必要

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FFFビームの吸収線量測定時の注意点

線量計について(多列検出器)

1. Octaviusを用いてFFFビームについて線量率の出力の一貫性に問題のないことを確認

2. ArcCHECKで6MVのFFFビームについて線量率による出力評価の変動が0.4%

3. Delta4、ArcCHECK、MtriXXを用いた多施設のIMRT検証の結果をreviewして、線量率の違いにおけるγ解析のパス率に有意差がないことをしめした

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FFFビームの吸収線量測定時の注意点

イオン再結合補正係数(ks)について

イオン再結合は初期再結合と一般再結合に分類され後者はパルスあたりの電離密度に依存

TrurBeam

6MV FF:0.03MU/puls FFF :0.08MU/puls

10MV FF:0.03MU/puls FFF :0.13MU/puls

AAPM TG-51 addendum ではksが1.05以下となるものをリファレンス線量計として用いることを推奨している

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FFFビームの吸収線量測定時の注意点

線量プロファイル

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FFFビームの今後

治療の高精度化に相応して今後FFFのリニアックが台頭してくると思われる

FFFビームは平坦な線量プロファイルを持たない為従来の品質管理手法が踏襲できないところもあり、FFFビーム特有の精度管理方法は今後のさらなる検討課題であり、ガイドラインの登場が待たれる